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ミシェル・パジェOECD人事部長を囲む研究会「国際機関における女性の活躍:現状と課題」要約

2018.03.19

 笹川平和財団は、2017年10月31日、経済協力開発機構(OECD)人事部長のミシェル・パジェ氏をお招きしてワークショップを開き、女性がどのように国際機関で活躍できるかについてご自身の経験に基づいてお話しいただきました。
 笹川中東イスラム事業グループは、グループの支柱的なプロジェクトの一つとして、2016年からイランにおける女性のエンパワーメント事業を展開しています。この事業において私たちは、カウンターパートであるイランの女性省およびエブテカール女性・家庭環境担当副大統領と協力・連携しながら、イランにおける女性の社会進出に関して、それぞれの経験や知見の共有、共同研究および政策協議を推進しています。今回の国際機関における女性の活躍についてのワークショップは、その事業に資するものとして位置づけられます。
 ワークショップの要約は以下をご覧ください。

■包摂inclusionという視点
本日は二つの側面からお話したいと思います。一つは女性の側から見て、女性はどのようにすれば国際機関に入り活躍することができるのかということ、もう一つは組織の側から見て、組織は男女のバランスが取れた環境をどのようにして作ることができるのかということです。ここで問題になっているのは包摂inclusionであり、この言葉はただ女性を職場に連れてくる以上のものを意味しています。

■組織の側面から
 OECDは経験的な実証に基づいて、世界の喫緊の課題、特に経済問題に関する政策を加盟国・非加盟国問わず各国政府に提案しています。OECDは各国政府や省庁と緊密な関係を持っていることから、こうした国々から多様な人材が集まっています。OECDの職場環境は、人物間の相互交流によって機能していると言えるでしょう。しかし統計的に見ると、職員の出身国の分配は均等とは言えず、それゆえ国際機関として、より多様な国から均等に労働力を提供してもらい、代表性を高めるのがOECDの課題です。このように多様性を増やすことは、加盟国にとってその国民が国際機関で職を得るという意味で好ましいだけではなく、OECDにとっても仕事の質を高めるために必要不可欠です。なぜならOECDは世界中のさまざまな地域の問題に取り組む必要があるため、国籍が偏っているとおのずから限界が生じてしまうからです。
 同じことが女性についても言えます。女性は世界の人口の半分を占めており、OECDはジェンダー関連の事業も展開しているために、OECDで女性が男性と同等の役割を果たすことは重要なのです。この四年間、私たちは男女のバランスのとれた環境を達成することに特に力を注いできました。具体的には、より包括的で柔軟な労働環境において、女性の組織への参画を可能にする人事制度を採用しています。統計を見ると、ここ10年で、OECDにおける女性の上級管理職の割合が著しく増えているのがわかります。これを達成するため、私たち人事委員会は、世界中の能力のある女性に働きかけ、OECDに適性があると判断された人材を採用しました。その際、女性の場合「攻撃的」と批判される言動を男性の場合「リーダーシップがある」と評価するようなケースを確実に取り除く必要がありました。つまり、組織の側面から見るならば、ジェンダーバランスを整えることは決して女性をただ単に多く雇い、数値目標に到達することではなく、こうしたジェンダーバイアスを取り除くための多くの協議的な取り組みを実施することなのです。

■女性の側面から
 では次に、女性から見た場合の側面についてお話します。女性が就労するにあたっての課題として、女性が家庭と仕事を持ちつつ良好な環境で働くためには、それに相応する後方支援が必要とされるということがあります。なぜなら、基本的には家庭のことは女性が担当するという傾向が依然としてあるからです。すなわち、女性が男性と同じ立場で働こうとするなら、女性には仕事と家庭のバランスを取りながら両立させることが求められるのです。また、世界を舞台に働くと、親戚や家族などのネットワークを利用できないということも挙げられます。私もある時期においては子供を持つことができませんでした。このようなわけで、私は今まで国際機関は女性が簡単に出世できる環境にあると感じたことはありません。
 しかし、これは一方でチャンスでもあるのです。私が国連に初めて来たとき、本当に世界中の様々な国の人が働いていることが印象的だったことを覚えています。国際的なフィールドでは、出身国に特有の男女の役割といった文化的な制約にとらわれることなく働くことができます。いくつかの国では、このような制約によって、例え同等の能力があっても女性が出世することは難しい場合がありますが、国際的な職場ならこれが可能になるということです。
 またもうひとつ確かなこととして、国際機関はジェンダーバランスといった考え方に敏感である、すなわち「守られた環境」であるということです。実際、ハラスメント対策やその予防のための措置もあり、その重要性が強調されています。私の経験に照らしても、これは間違いないと言えるでしょう。

 

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