Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第472号(2020.04.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、人々が集う機会が著しく減っている。選抜大会などのイベント、集会、公演などの準備をされてきた方々のご尽力への感謝とともに、予防を怠るまいと思う。連日の関連報道の中に、病院船という文字が目に入った。病院船導入の意義について、本誌456号に(公社)モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長よりアメリカ、ベトナム、スペインの病院船の紹介とともに解説をいただいている。速やかな治療や隔離による感染拡大防止という新たな視点も加えてお読みいただければと思う。
♦海の問題をひとつ。見えず聞こえず増えているものは何か。答えは海中の騒音である。近年の人工的な騒音の多様化と増加が、音のやりとりを利用している海洋生物の生存や繁殖に影響すると懸念されている。海中音響研究の第一人者である(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の赤松友成部長より解説をいただいた。対策は、海中騒音の実態とその生物学的影響を科学的に解明し、それらに基づく騒音防止策を講じることである。わが国の音響研究の貢献と海関係者の理解が待たれる。
♦映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』は、和歌山県太地町を舞台とした捕鯨と反捕鯨の物語である。捕鯨を「海に生きる民の伝統」という視点から捉えたこの映画の発表後に、わが国は商業捕鯨を再開している。映画の監督をされた佐々木芽生氏より、再開を境に海外メディアの報道が変わってきたことを教えていただいた。さらに報道の影響力、科学の分析力、そして国や地域の文化の多様性の理解が、国際社会に生きる上で大切であることも強調されている。ご一読と映画の観賞を是非お薦めする。
♦2020年は海洋に関する大きな会議が偶然にも連続する。海洋政策研究所の角田智彦主任研究員よりその全体をご紹介いただいた。数年間隔の開催年が一致したとはいえ、国連海洋会議、CBD-COP15、COP26などの主要な国際会議が、氏がまとめた一覧に14件もあり、しかも地球の持続可能性に向けた海洋問題の取り組みである「国連海洋科学の10年の計画」の決議もある。G7、G20、世界海の日や国内での海の日をはじめとする海洋関連記念日を入れると幾つになるのか。新型コロナウイルス感染症のパンデミック化に、準備を進めてこられた関係者はヤキモキされていることであろう。順に中止か延期を余儀なくされているが、早期に収束し、会議やイベントが開催の運びとなることを祈っている。(窪川かおる)

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