Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第451号(2019.05.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

♦地球温暖化に伴う日本海の海底にある底層水形成の循環システムの変化により、溶存酸素が減り続けており、100年後には底層水が無酸素化し、日本海の水産資源は危機に瀕するとの論稿を本誌第427号に掲載した。
♦今回は、風による循環と水の密度差によって海洋大循環が生じるメカニズムと、後者の南極底層水に生じている変化につき、大島慶一郎北海道大学低温科学研究所教授にご解説いただいた。現場観測データを著しく欠く南極海では、南極底層水の生成域や生成量など基本的なことが不明であったが、最近では人工衛星マイクロ波放射計データを用いることで、その基と成る薄氷域(ポリニア)がどこにあるかを検知できるという。しかし、近年、全大洋の底層に拡がっている南極底層水が顕著に高温化・低塩化しており、その生成量を大きく減少させるとともに、海による南極氷床の融解加速により海面上昇を生じさせ、この氷床融解水(淡水)の増加が底層水の減少をもたらしているという。気候変動への影響が懸念される。
♦2019年4月16日、阿蘇中岳第一火口が噴火し人々を驚かした。有名な阿蘇カルデラに匹敵する規模のカルデラが薩摩半島の南約50㎞の海底に存在する。鬼界海底カルデラである。このカルデラに大規模な溶岩ドームが形成されていることを発見した巽 好幸神戸大学海底探査センター教授に、鬼界海底カルデラの探査プロジェクトについてご説明いただいた。超巨大噴火の確率は100年に1%とはいえ、その準備期にあるこのカルデラにつき、2021年度には(国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC)との共同調査も予定されているとのこと、その成果に期待したい。
♦2019年4月18日に刊行された『海洋白書2019年』は、同年6月に開催されるG20の議題となる海洋プラスチック問題を「なぜプラスチックが海の問題なのか」と題して巻頭特集した。現在注目を集めているプラスチックごみをはじめとする海洋ごみ問題の解決に奮闘する山陽女子中学校高等学校地歴部の活動について、井上貴司同校教諭にご寄稿いただいた。漁業者の協力を得て、底引き網を用い海底ゴミを回収し、瀬戸内海の小島に漂着するごみを回収する地歴部の活動の様子には頭が下がる思いがする。なお、山陽女子中学校高等学校地歴部は、この活動により第2回(2018年)「ジャパンSDGsアワード」SDGsパートナーシップ賞を受賞した。ぜひご一読を。(坂元茂樹)

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