Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第449号(2019.04.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

♦日本の漁業生産量は1984年をピークに減少を続け、2017年には最盛期の約3分の1に当たる430万トンまで落ち込んでいる。その背景には、国際的な濫獲による水産資源の減少や漁業者の減少・高齢化、さらには国内消費の落ち込みがある。2018年12月、適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、資源管理措置並びに漁業許可及び免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す改正漁業法が成立した。これまで地域の漁業協同組合に優先的に与えられてきた漁業権についても見直し、適切に利活用されていない漁場については、企業の新規参入を認めるなど注目を集めている。
◆この法改正に尽力された小林史明衆議院議員より、改正漁業法につき解説いただいた。これまでの量を追い求める漁業から質を求める資源管理型漁業への転換をはかり、漁業資源の回復や漁業関係者の収益改善をはかる本法の適正な運用と同法による地域社会の振興への熱い思いがあふれる論考である。体験型観光としての漁業の可能性の指摘は興味深く、体験型観光を求める近年の旅行者の傾向にも適合しており、新たな地域振興策として期待したい。
◆大澤隆文環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性保全専門官に沖合域における海洋保護区に関する日本の取り組みついてご説明いただいた。2020年までに海域の10%を海洋保護区にするとの愛知目標は、世界的には2019年1月時点で国家管轄権内水域の17.3%に達している。他方、日本は8.3%にとどまり、しかもその大半は水産生物の保護培養等の海洋保護区であり、沖合域の海洋保護区は十分ではないという。2019年1月21日の中央審議会自然環境部会における沖合域保全のための海洋保護区の理念、指定及び管理方針を含む答申の実現に期待したい。
◆おいしい魚を食べたいとき、築地に足を運ぶ人は多いと思う。「築地ブランド」に対する信頼のなせる業であろう。佐藤篤子(一社)東京築地目利き協会代表に、築地魚がしコンシェルジュの活動についてご寄稿いただいた。すでに魚がしコンシェルジュが180名以上誕生している由。市場の仲卸は魚の目利きという職人技により魚を格付する機関であるとの説明を聞くと、こうした人びとによって「築地ブランド」が守られ、日本の魚食文化が支えられてきたことがよくわかる。今後も、移転に左右されない築地の価値作りに期待したい。(坂元茂樹)

第449号(2019.04.20発行)のその他の記事

ページトップ