Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第445号(2019.02.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆米国の非営利組織「Xプライズ財団」が主催する、深さ4千メートルの深海を自律型ロボット(AUV)を使い、水平方向5メートル、垂直方向50センチメートルの精度で、250平方キロメートル以上の海底の地形図を24時間以内に作成する国際競技大会の決勝進出の8チームに、日本から参加した「チーム・クロシオ」と日本財団が支援しているGEBCO-NF奨学生チームが残ったことは記憶に新しい。結果は、2019年3月に発表予定と聞くが、欧米など32チームが参加しており、AUVの技術開発に対する各国の関心は高い。
◆こうした海中ロボットには、搭乗型タイプ(HOV)、遠隔操作型タイプ(ROV)、自律型タイプ(AUV)があるが、(国研)海洋研究開発機構の吉田 弘氏から、2機のAUVを用いた電気探査による海底下の鉱物分布を知る画期的方法を含む海中ロボットの活用の必要性を説く論考をご寄稿いただいた。日本の領海と排他的経済水域には、メタンハイドレートというエネルギー源やベースメタルやレアメタルが採れる深海の鉱床、レアアース泥などの資源が眠っているが、資源探査のみならず海洋環境の調査におけるAUVの活用とそのための課題が論じられている。
◆2017年にようやく底を打ち反騰しているものの、世界の海運産業は長期不況に見舞われている。とりわけ韓国の海運産業は、最大手韓進海運の倒産にみられるように大打撃を受けた。韓国海洋大学教授の呉 聳湜氏から、市況産業である海運業には経済と金融の知識が不可欠との考えから開設された、同大学の海洋金融大学院についてご説明いただいた。アジア初の海洋金融教育の拠点として出発した韓国海洋大学の動きから、日本も学ぶべき点があるように思われる。
◆鹿児島県立短期大学教授の福田忠弘氏からは、「海を耕した政治家」と称される原耕衆議院議員の足跡についてご寄稿いただいた。原の大きな業績の一つに南洋漁場開拓事業がある。原は、100トン規模のカツオ船2隻に113名の漁師とかつお節加工業者を乗せて、1927(昭和2)年にパラオなど南洋群島のみでなくオランダ領東インド(現在のインドネシア)の海域調査を行い、インドネシアのアンボンに日本にはかつお節を、欧米には缶詰を輸出する一大漁業基地を建設した。現地の人々にカツオ漁・マグロ延縄漁の方法を教え、同地滞在中に客死した原の人生から、戦前の国際貢献のあり方が垣間見える。  (坂元茂樹)

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