Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第444号(2019.02.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆海洋の中でも、沿岸域は、私たちにもっとも身近な海であり、その利用と管理には持続可能性が求められている。今号では、最近の気になる沿岸域の話題をご寄稿いただいた。著者諸氏は、沿岸域において、観光、環境保全、防災、経済発展などに関わる課題解決に知恵と実行力を発揮されている。その活躍を是非ご一読いただきたい。
◆日本各地で海岸浸食が進んでいる。その主な原因は漂砂の激減である。ダムや港はその一因であるが、建築後にその影響を取り除いて問題を解決するのは難しいので、山・川・海を連携した管理を総合的に進めているという。土砂の管理には土砂の量と動きの情報を必要とするが、潮汐や海岸流や海底地形の変化が激しい浅海では、情報収集は難しい。豊橋技術科学大学大学院工学研究科の岡辺拓巳助教とそのグループは、魚群探知機およびGPSを搭載する漁船の協力を得て海底地形を11年もモニタリングしてこられ、その有効性を見事に示されている。今後のデータの利活用と漁業者による水産管理に注目したい。
◆日本の代表的な沿岸の海洋景観に日本三景として知られている松島、天橋立、厳島がある。その一つ、松島は東日本大震災の被害を受けたが、宮城県松島町産業観光課の安土哲課長にそれを乗り越えて松島湾の魅力をアピールする活動を教えていただいた。2013年に「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟したことを契機に、湾周囲の3市3町が連携して「再発見! 松島“湾”ダーランド構想」を開始したのである。湾をワンダーランドにする理念は広がり「仙台・松島復興観光拠点都市圏DMO」が2018年に設立された。松島湾に始まる広域連携は、観光振興にも環境保全にも相乗効果をもたらしている。
◆近年、停泊中の大型クルーズ船等の船舶を、期間限定で宿泊に利用するホテルシップが世界各国で一般的になってきた。ホテルシップは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて懸念されるホテル不足の解消の一助になると期待されている。それについて、(一財)みなと総合研究財団クルーズ総合研究所の石原洋副所長より解説をいただいた。洋上の快適な旅を提供する船旅の人気は高まっているが、港に停泊中の客船の活用にも将来性が期待されている。しかし、港湾内での停泊ゆえの課題も少なからずあり、それに向けての制度改正なども必要だという。それらが解決した暁には、船ひいては海への関心の高まりが期待される。  (窪川かおる)

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