Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第443号(2019.01.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆地球温暖化対策として、ブルーカーボン生態系によるCO2吸収が注目されている。ブルーカーボンとは海洋生態系に蓄積される炭素のことをいい、そうした作用をする沿岸の藻場やマングローブ林などの生態系をブルーカーボン生態系という。陸上の植物が光合成によりCO2を吸収・固定する炭素のことをグリーンカーボンと呼ぶのに対し、2009年に国連環境計画(UNEP)が新たな吸収源対策としてブルーカーボンと命名した。四方海に囲まれた日本にとっては、沿岸域における炭素固定効果は大きく、その評価方法や技術開発の確立が課題となっている。
◆2018年にSDGs未来都市に選定された横浜市のブルーカーボン事業の取り組みについて、(株)エックス都市研究所理事で横浜市次期環境未来都市計画に関する有識者懇談会委員の信時正人氏にご寄稿いただいた。横浜市は、八景島シーパラダイスの「セントラルベイ」を使用したワカメのCO2吸収量の測定の実証実験を行ったとのことであるが、市の主導による民間企業や市民レベルでのブルーカーボン事業の推進に期待したい。
◆(独)国際協力機構(JICA)がバヌアツで行っている「豊かな前浜プロジェクト」について、JICAの枝 浩樹氏にご寄稿いただいた。同プロジェクトでは、日本の支援により、伝統的な沿岸コミュニティによる禁漁区などの資源管理と、女性による貝細工づくりなどの生計手段の開発を同時に進める「コミュニティ主体による統合型資源管理(CB-CRM)」アプローチを実践しているとのことである。こうした女性のエンパワーメントとともに、地震や津波、サイクロンの被害に遭っている太平洋島嶼国の災害リスク管理の面での日本の貢献に期待したい。
◆フリーダイバーの福田朋夏氏からはフリーダイビングの魅力を縦横に語ってもらった。公式競技としての3つの潜水方法の詳細については本誌を読んでいただくとして、福田氏は2018年5月にグランドケイマン島で開催された大会で、コンスタント・ウェイト・ウィズフィン(CWT)で世界でも女性5人目となる100mの深さに到達した有名選手である。他のスポーツと違い、筋肉をいかに使わず酸素消費を少なくすることが大切とのこと。心拍数を落とすための呼吸法が重要と聞くと、奥の深いスポーツであることがわかる。名画『グランブルー』で、フリーダイバーのレジェンドであるジャック・マイヨールの姿を通して、海との奇妙な一体感を味わった疑似体験が鮮やかに蘇るエッセイである。ぜひご一読を。 (坂元茂樹)

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