Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】最新号

第438号(2018.11.05 発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆「化石の日」が今年から始まった。10月15日である。2017年に国際古生物学協会が「国際化石の日」を10月第2週の土日に制定したことを受けている。化石と言えば恐竜の人気は衰えない。北海道で発掘された「むかわ竜」の全身骨格は記憶に新しい。陸上の恐竜に匹敵する海洋生物の化石は、5億3~7千万年前のカンブリア紀の生物であろう。カナダや中国などで、多様で豊富な太古の海の化石が現在は山や丘となった地から発見されている。化石の日に生命を育んだ海と地球の歴史を振り返り、海にまつわる多くの問題に思いを馳せつつ本号を読ませていただいた。
◆沖縄県最南西端にある竹富町は、島の豊かな自然と個性的な文化が魅力である。その竹富町は、2013年に全国で初となる竹富町海洋基本計画を策定した。さらに第3期海洋基本計画の閣議決定を受け、第2次竹富町海洋基本計画を、これも全国に先駆けて2018年6月に策定した。その経緯と概要を竹富町政策推進課課長の通事太一郎氏よりご寄稿いただいた。第2次計画は、国内外観光客の増加への対応、国境離島の役割などの新たな課題を捉えている。自然を守りつつ生活向上と産業発展を図る竹富町の挑戦に応援をお願いしたい。
◆海洋分野の多くでは、働く女性の割合が少ない。男女の量的なバランスは、イノベーションとその社会普及の有効手段になると、世界海事大学准教授の北田桃子氏は強調する。例えば、ソロモン諸島のエネルギー供給の限界は、女性の参画が新しい考え方の導入となり、問題解決の可能性がある。一方多様性の必要性の例は人間の体にもある。人間の体内には無数の多様な細菌がいて、それらの能力がバランスを保つことで健康が維持される。海洋の重要性が高まる今日、女性を含めた全人類の総力を結集して持続可能な開発となるよう取り組むべきであるとのメッセージを是非ご一読いただきたい。
◆子どもの頃、江戸前で知られる東京湾でよく潮干狩りをした。干潟は子どもが海に親しむのに好適である。底生生態系調査に携わる山田一之氏より東京湾の干潟生態系の変遷と赤潮対策についてご寄稿いただいた。ご専門はゴカイ類の分類で、1995年に始まる東京大学の干潟実習に協力している。ゴカイは干潟を掘らなければお目にかかれず、人知れず生きる地味な生物である。しかし干潟の砂泥の中で彼らは環境変化の影響を受けている。赤潮はよく聞く環境悪化の原因であるが、その原因となる生物の増殖が速いため完全な除去は難しいという。長年にわたり現場を見続けてきた山田氏からは赤潮を有効に利用するという転換の発想をご提案いただいた。 (窪川かおる)

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