Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第433号(2018.08.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆「暑中お見舞い申し上げます」の言葉では足りないくらいの酷暑である。日本上空の太平洋高気圧の強まりとそれに重なるチベット高気圧の張り出しが原因とされる。天喜4(1056)年に「いかにせん夏はくるしきものなれや衣かへても暑さまされば」と謡った平安人にも、同じような暑さが襲っていたのかもと想像する。異常気象の根本には、地球温暖化による海水温の上昇があり、人類存続の基盤が海洋であることを改めて感じさせる夏である。
◆自然資源環境管理の現場におけるソーシャル・ラーニングについて、東京海洋大学海洋政策文化学部門の川辺みどり教授よりご寄稿いただいた。社会や生態系に利するための関係者間の参加型意思決定や協働の場で生まれる人びとの学び合いを「ソーシャル・ラーニング」と呼ぶ。その多重グループ学習の枠組みについては論稿をお読みいただくとして、複雑で不確実性に満ちたシステムの自然資源や環境には人知を超えた変動リスクがあり、順応的管理が必要という。専門家による権威主義的な「啓蒙モデル」に代わる、「ソーシャル・ラーニングモデル」を確立するために必要な場とデザインをどう構築するか検討に値する提言といえよう。
◆7月の西日本豪雨の甚大な被害にみられるように、今や日本は災害列島と化している。熊本大学の滝川 清名誉教授より、熊本県沿岸域再生官民連携フォーラムの設置とその目指すところについて、論稿を頂戴した。海洋環境の悪化が著しい有明海・八代海域は台風の常襲地帯でもあり、いかにして環境と防災が調和した沿岸地域社会を形成するかが大きな課題とされる。同フォーラムは、「海域環境の保全と改善」「水産資源の回復と漁業振興」「環境と防災の調和」の3つを基本として「沿岸地域の活性化」を図る取り組みを行っているとのことであるが、行政主導でない、産・官・学・民の協働・連携で立ち上げたフォーラムの今後に期待したい。
◆パラオでシャコガイの養殖普及に取り組んでいる(公財)海外漁業協力財団水産専門員の曽根重昭氏からシャコガイの持続的利用に関する論稿をいただいた。シャコガイは、国際的な商取引を制限しないと将来絶滅の危機があるとして、輸出入に輸出国の許可書を要するワシントン条約附属書Ⅱに掲載されている種である。養殖にあたり、ソーラー生物であるシャコガイは給餌をしなくてもよい海藻養殖に似るという。商業ベースに乗せることに成功した養殖場では密漁への対応が必要であり、こうした違法漁獲者から購入できない仕組み作りが必要との指摘はIUU漁業撲滅の課題に通底する。 (坂元茂樹)

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