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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第428号(2018.06.05 発行)

近代日本の海運史を伝える ~日本郵船歴史博物館と日本郵船氷川丸〜

[KEYWORDS]日本郵船歴史博物館/氷川丸/郵船みらいプロジェクト
日本郵船歴史博物館学芸員◆鈴木久美子

日本郵船歴史博物館と日本郵船氷川丸は、近代日本の海運史を通じた海事思想の普及活動が認められ、2017年に第10回海洋立国推進功労者に選ばれた。今年4月で竣工から88年を迎えた氷川丸をはじめ、同博物館は、近代日本の海運史を伝えるための遺産の保存と活用に25年にわたって努めてきた。
現在は、未来の日本の海運にむけて、海運業の認知度を高め、船員を志す人を増やすための活動にも取り組んでいる。

日本郵船歴史博物館

日本郵船歴史博物館は1993年に資料館として開館以来、日本郵船 (株)の歴史を通じて一人でも多くの方々に、海や船への親しみを深めてもらうことを願って活動してきました。2003年に現在地である中区海岸通の横浜郵船ビル1階に移転し、リニューアルオープンしてからの入館者数は延べ約48万人に達しています。
館内は、日本郵船の創業時(1885年)から年代順に、会社の成立、発展、壊滅、復興や成長の歴史を常設展示で紹介しています。主な見どころは、第1回取締役会議事録(1893年)や、乗船客に贈呈品として配られた絵葉書、豪華客船時代のパンフレット、歴史の分岐点を捉えた貴重な企業文書や写真、迫力のある船体模型などです。中でも浅間丸や氷川丸をはじめとする、幻のモデルメーカー籾山艦船模型製作所(1912~1933)の船体模型は竣工当時の迫力ある姿が精緻かつ精巧に細部まで再現され、来館者を圧倒します。
また、年に3~4回、海運、物流、船舶、海などをテーマとした企画展示や日本郵船の今を紹介するNYKコーナーなどもお楽しみいただけます。2017年度の企画展では、大正~昭和初期の観光ブーム期に、外国人客誘致の一翼を担った客船メニューのデザインを紹介した「日本が運んだニッポン-客船時代のメニューデザイン-」(以下、メニューデザイン)や、横浜港発展のため、日本郵船が明治期の横浜港開発に果たした役割について展示した「ハマの石造りドック-横浜船渠の秘密」(以下、石造りドック)などを開催しました。デザインや技術など色々な側面から、日本郵船が海運史の中で果たした役割を伝えることができ、好評をいただきました。
企画展に関連したイベントも多く開催しています。メニューデザインの企画展の時は、展示では紹介できなかった「食」に焦点を当てた「元南極料理人が語る-氷床の食卓、"食べる"という幸せ」や「飛鳥II元総料理長が客船の食文化についてお話しします」などの講演会を行いました。実際に乗船していたプロの料理人の話を通して、船上の食事という非日常の空間を疑似体験できたことと思います。
石造りドックの企画展の際には講演会「船会社が語る!造船所のしごと」を開催し、普段見ることのできない現場の写真から、建造・修復・解撤(かいてつ)という船の一生が披露されました。
その他、海の日には施設の無料開放を行い、普段なかなか博物館に足を運ばない方にも来館してもらうきっかけづくりをしています。また月4回の常設展解説や学芸員による企画展解説(不定期)に加え、夏休みには子どもたちに船や海運を身近に感じてもらえるように日本郵船の船をつくるペーパークラフト教室や、ポンポン船教室、さらにクイズラリー、子どものための音楽会など子どもたちに焦点を当てたイベントを多数実施し、海事思想の普及にも力を入れています。

博物館の常設展示室 講演会「船会社が語る!造船所の仕事」

日本郵船氷川丸

氷川丸は、1930年に横浜船渠(株)(現三菱重工業(株)横浜製作所)で建造された貨客船で、シアトル航路に就航しました。太平洋戦争中は海軍特設病院船として、終戦後は復員船・引揚船として使用され、1953年に再びシアトル航路に復帰しました。いくつもの激動の時代を乗り越え、1960年の引退後は神奈川県横浜市の山下公園に係留され、一般公開されることになりました。現在でも横浜港のシンボルとして親しまれ、1961年の係留以降入館者数は延べ2,500万人を超えました。
氷川丸は、当時における先進の造船技術を導入した貨客船であり、海外との輸送手段を貨客船が担っていた時代、および戦中戦後の激動の時代において、社会・経済史上に大きな役割を果たしてきました。2016年、戦前期の日本で建造された外航船の唯一の遺存例として、近代交通史上、造船技術史上貴重であるとの評価を受け、海上で保存されている船舶としては初めて重要文化財の指定を受けました。
今でも、頑丈な鉄鋼板が用いられたリベット工法による外板や、当時最新鋭のB&W社(デンマーク)製の大型・高出力ディーゼル機関、日本に直輸入された最初のアールデコ様式の船内意匠などを目の当たりにすることができます。船内にはアールデコ様式のインテリアを見ることができる船客エリア、操舵室や機関室など船員の仕事を紹介する乗組員エリア、氷川丸の歴史を伝える展示エリアがあり、ボランティアによる船内案内を月4回行っています。
また海に携わる仕事への関心を高めるために、毎年中学生・高校生の職場体験を受け入れ、船内の点検や真鍮磨き、受付やショップ販売業務を経験してもらい、氷川丸を支えている多くの人がいること、そしてその人たちの仕事を通して船や海に興味を持ってもらえるよう工夫しています。

日本郵船氷川丸 氷川丸1等特別室寝室

未来の日本海運にむけて

2017年、近代日本の海運史を通じた海事思想の普及活動が認められ、日本郵船歴史博物館と日本郵船氷川丸は第10回海洋立国推進功労者に選ばれました。歴史博物館は1993年に開館しリニューアルを経て25年が経ちます。氷川丸は今年4月で88歳、米寿を迎えました。時の流れとともに海運を取り巻く環境や世情は変動し、さまざまな課題が出て来る中で歴史遺産の保存・活用に励んできました。
現在、日本郵船では、未来の日本の海運にむけて、「郵船みらいプロジェクト」という活動にも取り組んでいます。若い世代に船や海に接してもらい、船員の職業の魅力を伝えることで海運業の認知度を高め、船員を志す人を増やす一連の活動です。この一環として日本郵船歴史博物館と氷川丸ではその歴史を学ぶ取り組みや、船内見学、クイズラリーなどを行っています。今後も多くの方々に、日本の海運や氷川丸に関心を持っていただけるよう努めていきます。(了)

  1. 日本郵船歴史博物館・日本郵船氷川丸 http://www.nyk.com/rekishi/
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