Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第424号(2018.04.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆春の訪れと新学期には桜が似合う。その桜の開花予想は、日本列島が南北に長いことを思い起こさせてくれる。あまり実感はないが領土は東西にも長い。2017年3月31日の学習指導要領改訂では、小学校第5学年社会科に「海洋に囲まれ多数の島からなる国土の構成などに着目して」と明記されるなど、領土を中心に海に関する扱いが増えている。新しい教科書は、小学校で2020年度から、中学校で2021年度から使用される。海の学びは総合的に考える力を伸ばし深い学びに繋がる。社会科も理科もすべての教科で、大人も子どもの質問に的確に答えられるように準備を怠りなく進めたい。
◆気候の変動への海洋の関与が大きいことは、今では周知のことだが、最近まで気候変動政策における海洋への注目は小さ過ぎた。2015年COP21でのオーシャンズ・デーの成功等に機を発し、協力者を増やしつつCOP22では「海洋と気候の行動ロードマップ(ROCA)」が作成された。COP23ではさらなる進展があった。この快進撃をグローバル・オーシャン・フォーラム代表のシシン-セイン氏と元代表補佐のクルツ氏よりご寄稿いただいた。勢いは気候変動政策が前進している証であり、行動する輪の広がりを期待したい。
◆1972年にPCB製造中止がなされて以降、それほど話題になってこなかったが、久しぶりに驚かされたのは、超深海のヨコエビからのPCB検出であった。PCBは、強い毒性と分解されない性質をもつ危険極まりない物質である。なぜ超深海生物が汚染されたのか。第10回海洋立国推進功労者表彰を受賞された東京大学名誉教授の蒲生俊敬氏は、超深海で起きている汚染の謎を海洋科学研究の最前線から理路整然と解き明かしていく。辿った先にある汚染仲介の候補は、マイクロプラスチックごみである。最後に蒲生氏は、超深海を含む広い海をもつ日本が超深海の調査研究を進める必要性を説いている。
◆自律船とは何か。自動車の自動運転を想像するが、日本では自動運航船とも呼ばれる。(国研)海上・港湾・航空技術研究所の丹羽康之氏より国内外での自律船の技術開発の状況についてご寄稿いただいた。必ずしも無人の船ではなく、既存の技術の組み合わせで自動航行の実現が可能だそうだ。要である障害物の検出等の性能アップが自動化レベルの向上に結び付く。欧州は自律船の実証試験で先んじているが、日本の技術力についての高い信頼性を自律船にも期待したい。 (窪川かおる)

第424号(2018.04.05発行)のその他の記事

ページトップ