Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第416号(2017.12.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆第24期日本学術会議が10月1日から始まり、会員210名、連携会員約2,000名が任命された。1期3年で、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること、科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させることを職務とする。大きく人文・社会科学、生命科学、理学・工学の3部構成で、その下に委員会と分科会が設置され、意見の発出を行う。海洋の分野では、地球惑星科学委員会、SCOR(海洋研究科学委員会)分科会、水産学分科会、海洋生物学分科会などがある。それぞれに海洋研究の施策への意見を提言などで出し、大型研究計画を提案し、国際組織との連携を進めている。しかし、海洋に関する問題を総合的に議論する場に欠けるため、海洋研究と開発への結集力は心もとない。それを改善しつつ海の研究の質を高め、国際共同研究を含めて海洋研究を推進する道筋作りは、第24期の課題であろう。
◆海をめぐる国際間の連携は今年大きく前進した。国連では6月に海洋会議が開催され、出席された前川美湖氏から報告をいただいた。この会議のテーマは「私たちの海、私たちの未来:持続可能な開発目標14(SDG14)の達成に向けた連携」であり、海洋と人類が現在・未来に直面する課題について当事国・地域から4,000人の代表団が集合したという。会議の成果は世界各国に持ち帰られた。SDG14達成に向けた各国・地域そして日本の行動が期待される。
◆9月14日に海上保安庁が日本財団と共同開催した世界海上保安機関長官級会合について、古谷健太郎氏から寄稿をいただいた。近年の海洋を巡る自然と社会の急速な変化は、世界的な脅威や危険になり、世界は協力して海洋秩序を維持する必要に迫られている。会合では、海上安全と海洋環境保護、海上セキュリティ、人材育成に関して議論が進められ、海上保安機関の連携の拡大と、グローバル化時代に即した人材育成の重要性が確認された。海上保安官を目指すわが国の若者達の励みとなろう。
◆世界一周に憧れるが、数日間でも船旅は夢のある旅行である。訪日観光客数を2020年までに4,000万人とする目標が政府により掲げられ、そのうち500万人が訪日クルーズ旅客からとされている。なかでも、人数が最多で、クルーズの利用が年々増加している中国人旅行者が期待される。しかし、著者の田中三郎氏は、訪日クルーズの港湾事情やクルーズ日数の実情から楽観はせず、今後への提案と意気込みを寄せられている。 (窪川)

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