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オーシャンニュースレター

第364号(2015.10.05発行)

第364号(2015.10.05 発行)

兵庫県高砂市あらい浜風公園の「この浦舟池」での干潟づくり

[KEYWORDS] 環境学習/学童保育所/海水池
Gata girl◆前田真里

兵庫県高砂市のあらい浜風公園に、歴史的・文化的背景から海と触れ合える場として、国内でも珍しい海水池の「この浦舟池」が造られたが、池内では藻類が繁茂し、親水性が低下していた。
Gatagirlの私は、この問題を解決するために、学童保育所の児童と一緒に、栄養を"ジュンカン"させて、環境を改善することに取り組んでいる。少しずつだが、ヨシも茂り、生き物いっぱいの海の公園づくりに近づいている。


はじめまして

みなさん、こんにちは。Gata girl(ガタガール)の前田真里と申します。私は、ヤマトオサガニやトビハゼがいるような泥に触れるのが気持ち良く、また干潟にいる小さな生き物たちの世界に踏み入れると新しい発見や気づきがありとても楽しいです。兵庫県高砂市のあらい浜風公園内のこの浦舟池は、私が育った町の隣にあり、大学の卒業研究で身近にあった海水池の環境改善に取り組めると知った時には大変嬉しく思いました。学生時代には、環境問題の解決策を提案することまででき、現在は、それを地域の方々や学童保育所の子どもたちと一緒に取り組んでいます。

高砂の海の歴史的背景と「この浦舟池」の問題

■この浦舟池

■海藻が繁茂したこの浦舟池

今日の高砂の海辺の大半が工場に占められていますが、かつては白砂青松で有名な美しい砂浜が広がっていました。しかし、市民は、かつての高砂の美しい浜辺をとり戻そう! と入浜権運動を始め、それに対して、高砂市と兵庫県は企業の協力を得て、埋立地に「あらい浜風公園」と、そこに海を感じることのできる、全国的にも珍しい海水の池が造られました。海水の池の大きさは、東西40m、南北20m、水深は海水の出入りで変わり、干潮時で約30cm、満潮時で約90cmとなります。ひょうたんの形をした浅い子供用のプールのようです。また海水の池の名前は、能の謡曲『高砂』の歌に詠まれる「高砂や、この浦舟に帆をあげて・・・」にちなんで「この浦舟池」と名づけられました。歴史的・文化的背景のある魅力的な名前で、私はこの名前が好きです。
しかし残念なことに、この浦舟池は、藻類が繁茂、水面を覆い、枯死したものはヘドロとなって、見た目も悪く、親水性の低い場所になってしまいました。私たちの研究室(徳島大学環境衛生工学研究室)は、兵庫県からこの問題解決の依頼を受け、2009(平成21)年より調査研究を始めました。その結果、環境悪化の原因は、池の石積みの間をすべてセメントで詰めてしまい、生き物が棲めず、藻類を始めとする食物連鎖の循環が止まってしまったことにあることがわかりました。

ジュンカンによる問題解決の取り組み

■子どもたちの野外体験学習会

■ジュンカンパズル

■子供たちとの学習

私たちは、加古川の河口干潟を目標に、栄養や命が循環する環境をこの浦舟池に作ることを提案したところ、県市はこの改善案を理解し、土などの材料を用意してくれました。具体的には、田んぼの土を使って池の中に干潟とヨシ原を作り定期的に生息環境や生き物のモニタリングを行っています。最近では、立派なヨシ原もでき、フトヘナタリガイ、ホソウミニナ、ヤマトオサガニなどといった干潟の生き物の生息が確認できました。干潟づくりには、「私たちの海辺」という気持ちを育んでもらうように、平成25年度からは学童保育所の子供たちと生き物の棲みかとなる干潟やヨシ原づくりを行うことを始めました。
カニや貝などが定着できる干潟を作れば、彼らが繁茂した藻類を食べ、それらを鳥が食べるといった栄養や命が循環します。また海藻も回収して、海藻堆肥にすれば、花や野菜に形を変えます。ヨシ原のヨシも色々と利用することができます。これらのことを子どもたちには、「ジュンカン」と教え、一緒に活動を行っています。月に一度の約2時間の学習会では、ジュンカンの仕組みが低学年の児童でも理解できるようなゲーム、パズル、紙芝居などの自作の教材を使っています。中でも、「ジュンカンパズル」と海藻キャラクターのみどりちゃんは、大変好評で、子供たちは富栄養化現象をよく理解し、低学年の子どもに教える子どもも見かけるようになりました。私は、試行錯誤しながら苦労して教材を作った甲斐があった!と大変嬉しく、もっと魅力的な教材を作りたいという意欲も湧いてきました。
野外体験学習の一つのテーマには、ヨシ原づくりとその利活用があります。ヨシ原づくりは種からヨシを育て、それをこの浦舟池内の干潟に移植すること、また大きく育ったヨシは刈り取り、工作などの材料に使います。
昨年は、学童保育所の子どもたちとヨシを使った灯ろうを作り、高砂市内のお祭り、「万灯祭」に出展し、自分たちの取り組みを発信することができました。ジュンカンの内容を形にして表現できたことに、子どもたちと共に感動しました。私の今の夢は、子どもたちと人が乗れるようなヨシ舟をつくり、この浦舟池に浮かべ、みなさんと楽しむことです。

ジュンカンに出会い、繋がろう

この2年間、ジュンカンに取り組むことによって、この浦舟池は少しずつ環境が良くなってきました。さらに、人と人とが出逢い、つながるといった素敵な場所になることも目指して、今年度からは「うみいけカフェ」も始めました。「何これ?」と思われた方は、是非、この浦舟池までお越しください。Gata girlがご案内しますので、一緒にジュンカンを作り、楽しみしましょう!(了)

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