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オーシャンニューズレター

第360号(2015.08.05発行)

第360号(2015.08.05 発行)

国際戦略港湾「阪神港」としての取り組み~日本の産業・生活を支える海上輸送拠点として、海外への挑戦~

[KEYWORDS] 国際戦略港湾/特定港湾運営会社/阪神港
阪神国際港湾株式会社常務執行役員◆中西理香子

2014年10月、神戸港埠頭株式会社と大阪港埠頭株式会社が経営統合し、阪神国際港湾株式会社として新たなスタートを切った。
さらに同年12月には、改正港湾法に基づく国の出資が行われ、初の「特定港湾運営会社」として国を筆頭株主に、西日本のゲートポート「阪神港」への集貨・創貨、国際競争力強化の取り組みを、国、港湾管理者と協働で進め、日本の重要な産業インフラとして港の発展を目指していく。


世界経済環境の変化

表1:世界の港湾別コンテナ取扱量(単位:万TEU、千以下切り捨て)

世界経済のグローバル化やボーダレス化の進展により、海上貨物輸送の需要は世界全体として拡大し、その中でも特にアジアの港湾において、コンテナ取扱個数の伸び率が高い。しかしながら、アジア諸港との競争の中で、日本の港湾における取扱個数の伸び率は低く、相対的な地位の低下を余儀なくされている。さらに、船社において、コンテナ船の大型化、アライアンスによる共同配船が進められており、日本に寄港する国際基幹航路が再編で減便されるなど、わが国の港湾を取り巻く環境は厳しい状況にある(表1)。
一方、日本の貿易において海上貿易が占める割合は極めて大きく、トン数ベースでは輸出入合計で99.7%(2013年)まで占めている。わが国において海上貿易の拠点である港湾は、産業と市民生活を支える重要なインフラである。
こういう状況を踏まえ、日本の港湾が世界で選ばれる港として生き残っていくために、国土交通省では国家戦略として「国際コンテナ戦略港湾政策」を打ち出し、それを推進している。この政策は、選択と集中による取り組みを進めることで国際戦略港湾(京浜港、阪神港)の国際基幹航路を維持・拡大し、国内産業の国際競争力を強化しようとするものである。具体的には、国際戦略港湾において国の指定を受けた港湾運営会社に対し、国が出資することで特定港湾運営会社となった会社が、国や港湾管理者と協働して、貨物の集約や航路誘致に向けた取り組み、国際競争力のあるターミナル整備等を進めていくこととなる。
阪神国際港湾株式会社は、昨年12月に国の出資を受け、わが国初の特定港湾運営会社として本格的に事業をスタートさせたところである。

集貨・創貨に向けた取り組み

図1:基幹航路転換のイメージ

西日本のゲートポート「阪神港」は関西経済圏を背後に抱え、西日本と世界を結ぶ総合物流拠点としての役割を担っている。その港湾を運営する阪神国際港湾株式会社の主な役割は、集貨・創貨に向けた取り組みと、コンテナターミナルの高規格化等による国際競争力の強化である。1点目の集貨・創貨について、本稿では、輸出に強く多くの基幹航路を有する神戸港と、大消費圏を背後に抱える大阪港の強みを生かしながら、広域で一元的な集貨を図ろうとしている点を紹介する。
当社のミッションである「基幹航路の維持・拡大」を実現するためには、まず阪神港に貨物をできる限り集約することが必要となる。「貨物のあるところに船を寄せる」のが船社の鉄則であるからだ。そのため、昨年度創設された国の「国際戦略港湾競争力強化対策事業」を活用し、国、港湾管理者と連携しながら、さまざまな集貨事業に取り組んでいる。
例えば図1のように、西日本や海外の諸港から釜山等東アジアの港に輸送され、そこで基幹航路に積み替えられて欧米に運ばれている貨物を、阪神港に集約し阪神港の基幹航路に積み替えて欧米に運ぶルートに転換してもらうことで、基幹航路を維持・拡大しようとしている。そのために必要なコストを、国の事業を活用して当社が一定の負担をすることで、民間事業者に貨物の集約、ルートの転換を働きかけている。

国際競争力のあるみなとづくり

水深16m、22列ガントリークレーンを有した高規格ターミナル

昨今の潮流として、海上輸送の一層の効率化や環境負荷の軽減等を図るため、コンテナ船の大型化が進められており、これを受け入れる港湾には、大型化に対応できる高規格コンテナターミナルの整備が必要となる。
阪神港でも、北米・欧州の基幹航路を有するターミナルを中心に整備を進めている。岸壁の -16mへの増深や耐震化といった工事の他、近年コンテナ船デッキ上のコンテナ積み列が22列にまで達しているため、それに対応可能なアウトリーチを有するガントリークレーンの高規格化等を進めている。
これらハード面の取り組みと合わせて、ターミナルコストの低減を図ることも競争力強化のためには必要である。当社としてもコンテナターミナルのリース料の減額を段階的に進めている。

おわりに

表1に示す世界の港湾別コンテナ取扱量を見ると、1980年と2013年の比較では上位10位が大幅に入れ替わっている。現在はそのほとんどを、日本以外の東アジアの諸港が占める状況になっている。1980年当時、世界第4位であった神戸港は2013年で52位、39位であった大阪港は57位と、その地位を低下させている。
ただ、神戸港と大阪港の個数を合わせると28位に匹敵する。今後、世界の厳しい競争の中で戦い抜くには、大阪港と神戸港が一層連携し阪神港として取り組むことが必須である。両港が互いに競争相手としても切磋琢磨しつつ、一体となって、日本の重要なインフラ「阪神港」として発展するべく力を出し尽くす所存である。今後も引き続き、皆様方のご支援を切にお願い申し上げたい。(了)

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