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第421号(2018.02.20 発行)

最近の浮体式洋上風力発電の動向

[KEYWORDS]風力発電/洋上風力発電/浮体式
(一社)日本風力発電協会国際・広報部長◆上田悦紀

世界的に普及が進んでいる風力発電は、その立地を海洋に拡大しつつある。
現在は海底から海面まで基礎を伸ばした着床式が主流だが、50mを越える大水深の海域に向けて、浮体式洋上風力発電の実証試験が各国で試行されている。
日本は長崎県五島列島に1基、福島沖に3基、合計1万6,000kW・4基の浮体式洋上風力発電を設置しており、この分野で世界をリードしている。課題は経済性であり、浮体の小形化・標準化・量産によるコスト低減が試みられている。

はじめに

2015年12月にパリのCOP21で先進国(欧州、米国、日本)と中進国・途上国(中国、インド、他)を含む世界を網羅する形で地球温暖化対策の推進が合意された。環境対策に消極的なトランプ米国新政権の成立により、化石燃料への揺り戻しも生じたが、CO2削減に向かう世界の流れは確実に強くなっている。人為的CO2の最大の排出源は火力発電(特に石炭)なので、温暖化防止は石油・石炭から再生可能エネルギーへの電源転換が有効な対策になる。
風力発電は、再生可能エネルギーの中では、大規模化と経済性に優れているため、世界では大規模水力発電に次いで広く普及が進んでいる。2016年末時点で、累計は4億8,700万kW・約33万基の大型風車が世界の電力需要の約4%(EUでは10.4%)を供給している。2016年の新規導入量は5,460万kW・約3万基/年、年間投資額は1,125億ドル(13.7兆円)である。

洋上風力発電の概要

■図1 洋上風力発電の種類

すでに20年以上に渡って風力発電を導入し続けた欧州では、風力発電に適した陸上の好風況地に風車を建て尽くしてしまったため、障害物がなく好風況で広大な海洋に進出した。1991年のデンマークのVindeby(450kW風車×5基)を手始めに、徐々に開発を進め、2002年にはHorns Rev(デンマーク、2,000kW×80基=16万kW)に大規模化した。紆余曲折を経て、2016年末には世界15カ国で累計1,438万kW(うち日本は6万kW)、新規で222万kWの洋上風力発電が建設され、今後も約400万kW/年の導入が続く。最近はØrsted(旧名Dong Energy)やVattenfall、EON、Shell等の大手企業が開発を担っている。
洋上風力発電には、風車の下が海底まで伸びて固定されている着床式と、風車を海面に浮かべて係留する浮体式の2タイプある(図1)。着床式(特にモノパイル基礎)は、すでに産業化とコスト低下が進み、北海・バルト海で広く実用化されている。しかし着床式では、水深が50mを越えて大きくなると、安定性とコストに課題が生じてくるため、新技術として浮体式洋上風力発電が各国で試行されている。
浮体上に風車を置く構想自体は古くからあった。実用規模で実現したのはStatoil社が2009年にノルウェー沖で2,300kW風車をスパー型浮体上に設置して実証運転を始めたHywind projectが最初になる。その後、ポルトガル(2011~2016年)と日本(2013年~)でも2,000~7,000kW風車による実証試験が行われた。さらに2017年には英国でも6,000kW風車(5基)が運転を始めた(表1)。他にも実機の数分の1の試験モデル機での研究が、米国、イタリア、ドイツ等で実施されている。
浮体式洋上風車の係留は、通常の船舶の碇と同様なカテナリー式(弛緩式)と、緊張係留で浮体運動を拘束して安定化するテンションリグ式(緊張式)がある。実機レベルの実証まで進んでいるのは、カテナリー式のスパー型・セミサブ型のみである。テンションリグ式は浮体を小型化できるが、万一の係留策切断時に転倒リスクがあり、風車用ではモデル機レベルの実験(イタリア・ドイツ)に留まっている。係留しないセーリング式(電気は水素製造等で貯蔵)も提唱されたが構想段階である。

浮体式洋上風力発電の課題と展望

■図2 福島県沖のセミサブ型浮体
(出典:FukushimaFORWARD)

現行の大型風車は大きな傾斜に耐える設計になっていないため、浮体式洋上風力発電では風と波浪による傾斜を数度以内に抑制できる安定性の確保が求められた。縦長で低重心化するスパー型と、水平方向に踏ん張るセミサブ型の2手法が実用化されている。
スパー型は、浮体の小形化・標準化・量産化・コンクリート採用等の点では有利だが、喫水が70m以上あるため岸壁では艤装できず(座礁する)、大水深の沖合で傭船料の高い稀少なクレーン船を使って風車を浮体上に艤装する必要がある。この作業はフィヨルド地形(崖で囲まれた大水深の湾)のノルウェーでは常時可能だが、日本では工事可能な風と波浪が平穏な時期を長期間待たねばならず、据付工程遅延のリスクがある。
セミサブ型(含むバージ型)は、埠頭で風車を艤装できるのでクレーン船は不要になるが、スパー型よりも複雑で大形の浮体(図2)が必要になり、その分だけ建造コストが嵩む。
両形式ではすでに複数台で複数年の運転実績が積まれており、技術的・工学的には一定の信頼性が実証されている。残る課題は経済性向上(とくに初期コストの低減)である。表1ですでに運転中の実証例の初期コストは100万円/kW以上であり、着床式洋上風力の約40万円/kW、陸上風力の15~30万円/kWより2倍以上高い。洋上は陸上よりも風況が良く、1.5~2倍の設備利用率(発電量)が期待できるので、初期コストを同比率以下まで低減するのが当面の課題であり、さまざまな手法が試行されている。

  1. GOTO FOWTで戸田建設(株)は鋼材より安価な鉄筋コンクリートで浮体を製造した。
  2. Hywind Scotland(2017年10月に運転開始)でStatoil 社は大型化(2,000kW→6,000kW)と量産(5台分)により、初期コストは100万円/kWを下回る見込み。
  3. FloatgenではIDEOL社のMoonpool式バージ型浮体(広義のセミサブ型。中央開口部と外部の海面差を利用して揺れを抑制)と安価なナイロン製係留索を採用している。
  4. NEDO((国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2枚翼による風車軽量化を検討中。

将来は、風荷重による傾斜に強いダウンウインド方式(ロータを風下に置く)や、傾斜への耐力を上げた浮体式専用設計の風車の採用等の工夫により、浮体を小型化して経済性向上できる可能性がある。また下記のより野心的な構想もあるが、実用化はされていない。

  1. 単一の浮体に複数の風車を設置する方式は、風向変化時に風上側の風車の後流渦(Wake)が風下側の風車に干渉して強度と発電量に悪影響があり、実機レベルの採用例はない。
  2. 浮体内でバラスト水を移動させる能動的な揺動制御は、故障時の安全性に懸念がある。
  3. 垂直軸風車を採用して低重心化(発電機を海面近くに設置可能)する構想も根強く存在するが、大型化の壁(1,000kW以上)を越えて長期安定運転できた実績はまだない。

このように浮体式洋上風力発電では各国がブレークスルーを目指して競争を続けており、近い将来の実用化(欧州では2022年頃の商用化を想定)が大きく期待されている。(了)

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