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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第414号(2017.11.05 発行)

風力発電関連産業の総合拠点化に向けて ~「グリーンエネルギーポートひびき」事業~

[KEYWORDS]洋上ウインドファーム/港湾法改正/占用公募
福岡県北九州市港湾空港局エネルギー産業拠点化推進課課長◆須山孝行

北九州市は、平成22年度から着手した「グリーンエネルギーポートひびき」事業の第2フェーズとして、昨年夏、大規模な洋上ウインドファームを設置・運営する事業者の公募を実施した。
これは、改正港湾法に沿った国内で最初の案件である。
このプロジェクトを弾みとし、風力発電関連産業の集積の更なる加速を図る。

「グリーンエネルギーポートひびき」事業の取り組み

北九州市は、産業の裾野が広く雇用創出効果が高い風力発電産業を主たるターゲットに据え、あらゆる機能を集積させた「風力発電関連産業の総合拠点」の形成などを目指し、2010年度から「グリーンエネルギーポートひびき」事業を推進している。その取り組みの一つとして、2016年8月、響灘海域に洋上風力発電所(ウインドファーム)の設置・運営を行う事業者の公募を実施した。これは、同年7月施行の改正港湾法に基づき、港湾区域における洋上風力発電の占用公募制度に沿って事業者を選定した日本で初めての事業である。

総合拠点のイメージ

風力発電関連産業の総合拠点化

この「グリーンエネルギーポートひびき」事業の取り組みは、充実した港湾インフラや約2,000haの広大な産業用地を有する響灘地区に、今後の成長が見込まれる風力発電関連産業の総合拠点を形成することを目指している。事業は3つのフェーズに分けて段階的に進めている。まず、第1フェーズとして、2013年5月、響灘地区に「実証研究ゾーン」を設け、風車の実証研究に併せて風車の物流・メンテナンス拠点の形成を実施する事業者の公募を実施した。その結果、3グループを選定し、現在、各事業者が施設整備などを進めているところである。そのうちの1グループは、今年度中に、通常は洋上に設置する風車を陸上に設置し、実証研究を行うとともに、洋上でしか見ることのできない機種を陸上で見学できるショールームとしても活用していく計画である。
第2フェーズとして、洋上風車の需要を喚起し、さらなる拠点化を図るため、響灘に大規模な洋上ウインドファームを設置・運営する事業者の公募を実施した。選定された計画では、響灘海域に最大44基の洋上風車が設置される予定で、その効果として、後背地である響灘地区の港湾施設や産業用地が有効に活用され、風力発電関連産業の集積が加速されることを期待している。
このように第1フェーズでは、まず陸上に風車を建設し、第2フェーズでは、北九州市の港湾区域に大規模洋上ウインドファームを建設する。第1、第2フェーズでの取り組みと並行して最終の第3フェーズでは、国内外の洋上風力発電事業をマーケティングし、北九州港の優位性を活かした市場開拓を図り、海域を問わず他地域でのプロジェクト・サイトへの支援を行いたいと考えている。これら全フェーズでの取り組みを進めることで、最終目標である「総合拠点」の形成を目指す。
「総合拠点」は具体的に次の3つの機能を備えたものである。まずは「風車の積み出し拠点」機能である。これは、洋上風車を設置サイトに積み出す際に、風車パーツをプレアッセンブル(仮組立て)し、完成体に近い形で海上輸送するための拠点である。風車を特殊作業船(SEP)に積み込み、建設サイトへ輸送することとなる。次に「輸出入/移出入拠点」としての機能である。響灘地区で製造した風車パーツを他の建設サイトへ輸出/移出したり、国内外で製造された風車部品を輸入/移入したりする物流センター機能で、本来の港湾機能である。最後に、「産業拠点」機能である。これは、港湾施設の後背地にメーカー、サプライヤー、メンテナンス事業者、物流事業者、海運事業者などのあらゆる関連産業が集うクラスターの形成を目指している。

第2フェーズの取り組み~洋上ウインドファームの誘致に向けて~

響灘地区の風力発電施設

港湾区域の拡張(港湾計画の変更):公募実施に先立ち、港湾区域内に港湾の管理運営と風力発電施設の共生が可能な範囲を定めるため、『港湾における風力発電について』に基づき、海域利用者等の関係者と適地の選定に関する調整会議を約2年間かけて実施した。その後、適地を「再生可能エネルギー源を利活用する区域」として港湾計画に位置付けるため、2015年12月に港湾計画の変更を行った。その際、響灘海域への洋上ウインドファームの誘致に向けて、より広い事業サイトを確保するために拡張した予定港湾区域について、港湾区域の変更申請を行い、2016年6月、国土交通大臣の同意を得た。拡張の結果、響灘海域における港湾区域は1,937haが追加され、約2,700haに及ぶ事業サイトが確保された。洋上ウインドファームの適地確保のため、港湾区域が拡張されたのは国内で初めてである。
占用公募制度の創設(港湾法の改正):港湾区域の拡張と並行して、港湾法改正の手続きが進められ、2016年7月に施行された。港湾は、管理の仕組みやインフラが整っていることなどから、洋上風力発電の導入適地として期待されている。今回の法改正で、洋上風力発電などにより港湾区域内水域等を長期にわたって占用する事業者を、公募により選定する制度が整備された。本制度は、港湾管理者にとって、最も適切な事業者の選定や確実な事業実施を見込むことができる一方、事業者にとっても、従来、港湾区域における水域の占用許可は本市で3年であったものが、20年間の占用が法的に保障され、事業性が担保されることになるなど両者にメリットがある。
響灘洋上ウインドファームの誘致:港湾法の改正を受け、第一号案件として響灘洋上ウインドファームを設置・運営する事業者の公募を2016年8月に開始し、2017年2月、有識者等で構成する評価・選定委員会による評価結果を参考に、占用予定者(優先交渉者)として、九電みらいエナジー(株)を代表企業とする合計5社の企業からなる「ひびきウインドエナジー」を選定した。同グループの提案では、風車は最大44基、総事業費は1,750億円程度と国内最大規模となっており、2022年の着工、順次運転開始の予定である。風車の配置などは、今後、海底の土質や藻場等の調査を行って決定されることになっている。今回の公募では、ウインドファームの設置・運営に加え、響灘地区の風力発電関連産業の総合拠点化に向けた提案も求めた。同グループは、①風車積み出し拠点の形成、②輸出入/移出入拠点の形成、③産業集積、に関して具体的な提案を行っている点も高評価のポイントであった。

洋上風力発電を全国で

経済産業省は、2030年時点でのエネルギーミックスについて、風力発電が総発電量の1.7%を担うと位置付けている。これは約180億kWhの発電量に相当し、同省は、1,000基以上の風車が必要とみている。陸地が限られたわが国にとって、洋上風力発電の導入拡大は不可欠である。
北九州市は、響灘洋上ウインドファームの誘致を契機に、総合拠点化に向けた取り組みをさらに加速し、今後、需要が増加するであろう国内やアジアの洋上風力発電施設の建設に響灘地区から支援していきたいと考えている。(了)

  1. 環境省地球環境局と国土交通省港湾局が連携し、関係省庁の協力を得て2012年に作成した、港湾の本来の機能と共生した大規模な風力発電の導入のための手順などを示したマニュアル。正式名称は『港湾における風力発電について ─ 港湾の管理運営との共生のためのマニュアル─ ver.1』
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