Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第411号(2017.09.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆近年の国際的な水産物の需要の高まりに伴い、世界の漁業資源は総じて過剰漁獲の状態にある。経済的価値の高いカツオ・まぐろ類は、とりわけその傾向が強い。本年9月1日に韓国・釜山で開催されていた中西部太平洋マグロ類委員会北小委員会は、太平洋クロマグロの漁獲枠を資源の回復見通しに応じて増減させる規制の導入につき関係国で合意した。この背景には、漁業資源は再生産が可能であり、適切な保存管理措置を行えば、持続可能な利用ができる資源であるとの考えがある。ただし、こうした漁業資源の持続的利用のためには、過剰漁獲を避けるだけではなく、小型魚を保護し、産卵場や産卵親魚を保護する統合的アプローチが必要となる。
◆海外まき網漁業協会会長の中前 明氏からは、中西部太平洋を漁場とし、カツオ・まぐろ類を漁獲しているわが国の海外まき網漁業について、資源管理の観点からご寄稿をいただいた。本稿では、新たな規制措置を導入しても開発途上島嶼国を規制の例外とするため実効ある資源管理が進まないという重い課題が、指摘されている。
◆南鳥島は、沖ノ鳥島同様に、サンゴや有孔虫といった石灰化生物が生成した炭酸カルシウム地盤から成る遠隔離島である。海面上昇と波の浸食速度からいかにこうした遠隔離島の国土保全を図るかは喫緊の課題である。海上・港湾・航空技術研究所の桑江朝比呂氏からは、日本最東端に位置する南鳥島の調査研究のために渡島した際の経験をご寄稿いただいた。日本にとって、南鳥島の排他的経済水域における海洋開発・利用は焦眉の課題であり、こうした遠隔離島の国土保全の問題は国全体で取り組むべき課題である。
◆2010年にブリティッシュ・ペトロリアム(BP)の石油掘削施設から大量の原油がメキシコ湾へ流出したメキシコ湾原油流失事故の記憶は、まだ生々しい。同様の環境災害が、ここ日本でも1997年に生じた。日本海におけるナホトカ号重油流出事故である。同事件から20年目を迎える今年、日本環境災害情報センター会長の大貫 伸氏から、大規模油流失事故の教訓の伝承の重要性を説く論稿をご寄稿いただいた。全国から集まった延べ27万人を超えるボランティアによる、流出した原油回収作業が日本に災害ボランティアが根付く契機となったことをはじめて知った。人類と石油の持続的な共生のために、万が一の事態に備えた次世代への事故の教訓の伝承を説く、大貫氏の言葉は重い。ご一読を勧めたい。 (坂元)

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