Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第407号(2017.07.20 発行)

真の日本の重心はどこか?

[KEYWORDS]海洋の管理/総国土の重心/大陸棚
内閣府・SIP「海のジパング計画」プログラム・ディレクター◆浦辺徹郎

日本の重心はどこか?これまでの計算は陸上のみ対象になっていたが、海洋国家を自認する日本であれば、領海および排他的経済水域(EEZ)の下の大陸棚を忘れてはいけないだろう。
海底国土を含めた新たな重心計算から見えてきた課題について考える。

人口重心と国土重心

よく知られているように、日本の「重心」には人口重心と国土重心(面積重心)という2つの定義がある。前者の人口重心は、国勢調査の結果に基づいて総務省統計局から発表されており、長期的には東南東方向へ移動しつつあるものの、2010年のそれは、岐阜県関市(北緯35度35分35秒、東経137度01分45秒)であった※1。そして、後者の面積重心は新潟県糸魚川市の沖合の日本海上(北緯37度27分29秒、東経137度38分01秒)にある※2(図参照)。
日本には富士山をはじめとする山岳があるので、陸上の『山』を含めた体積重心も計算する必要があるかも知れない。そこで、標高0メートル以上の国土の体積重心を計算してみると、北緯37度17分44秒、東経137度49分22秒となり、面積重心より約25キロメートル南東方向に移動するが、それでも海上に位置することに変わりはない。

日本の真の面積重心

さてこれからが話の本題である。本Newsletterの読者であれば、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると、陸上の国土の11.8倍もの面積があることはご存じであろう。国連海洋法条約は、排他的経済水域の海底およびその下を大陸棚と定めるとともに、大陸縁辺部が200海里を超えて延びている場合はさらに延長大陸棚を設定できると規定している。日本は2012年4月に大陸棚限界委員会より大陸棚延長の勧告の一部を受けており、それを加えると領海の下の海底と大陸棚の合計は国土の12.6倍に達する。
陸上の国土に領海の下の海底と大陸棚を加えた「総」国土の面積の重心を算出してみよう。総国土にあるさまざまな資源は陸上・海底を問わず日本の管轄権の下にあり、環境に配慮しつつ開発することが認められているからである。ここでは話を簡単にするため、延長大陸棚の部分は含めず計算すると、総国土の面積重心は本土をはるか南に外れて、伊豆鳥島の真西約200キロメートルの海上(北緯30度40分34秒、東経138度11分03秒)にあることが分かった。ちなみに陸域を除いた海域のみの面積重心は(北緯30度05分26秒、東経138度13分40秒)にある。
次に、それら領海と排他的経済水域にある海水の体積重心も計算した。海洋は海面上から海底下に至る重層的な開発、利用、保全の場であり、「海洋の管理は総合的かつ一体的に行われなければならない」(海洋基本法第6条)からである。日本の大陸棚の南部には伊豆・小笠原海溝があり、そこにある日本の大陸棚の最深点は水深9,780メートルに達することもあって、日本水域の海水の重心はさらに南に位置し、火山活動で知られる西之島の北西160キロメートルの海域(北緯28度27分08秒、東経139度57分21秒)にある。

極端な南北格差

図を見て気がつくのは、4つの重心の間の大きなズレである。たとえば、陸上国土の面積重心と総国土のそれは互いに約750キロメートルも離れている。総国土重心より南にある陸地は薩南諸島、琉球諸島のほか、大東諸島、小笠原群島、南鳥島、沖ノ鳥島などの国境離島に限られ、それの南側の陸地面積および人口はいずれも北側の1.3%程度に過ぎない。このこともあって、わが国の海洋の総合的管理を実現するために必要な海洋に関する科学的データ量の南北格差はさらに極端なものになっている。
わが国では昨年4月に『有人国境離島法』の制定があり、7月に『海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針』が改定され、離島の役割が見直されている。これにより少しは事態が改善される期待もあるが、海洋そのものの管理に関する取り組みはほとんど進んでいない。

南にある海底資源

ここで指摘しておきたい重要な事実がある。それは海底熱水鉱床やコバルトリッチ・クラストといったわが国の海底鉱物資源のほとんどは、沖縄トラフ海域も含め、総国土の重心の南側の大陸棚に分布するということである。それらの探査と開発は、わが国の海洋国土の開発と保全を進める上で大きな足がかりになるであろう。
海洋研究を促進し、海洋人材を育成し、新たな海洋産業を創出し、わが国の総国土のバランスある発展を実現することは、次期海洋基本計画(2018〜23年)での大きなチャレンジといえるのではないだろうか。(了)

■日本のさまざまな「重心」

人口重心は 2010年の国勢調査の結果に基づいて総務省統計局が発表したもの。それ以外の「重心」は公開されているデータを用いて新たに計算した。地形データはGEBCO 2014 Grid: 30秒グリッド (http://www.gebco.net/data_and_products/gridded_bathymetry_data/)を、EEZの境界(赤線)はFlanders Marine Institute (VLIZ)のWorld EEZ v7 2012-11-20 (http://www.marineregions.org/downloads.php)を使用した。向かい合っているまたは隣接している2つの沿岸国間の排他的経済水域の境界画定は国際法に基づいて両国の合意により行なわれるが、日本の排他的経済水域にはまだ合意が成立していない部分があることに注意が必要である。図はランベルト正角円錐図法で表示。なお、計算手法については吉田剛博士によっている。

  1. ※1総務省統計局 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/topics/topi61.htm
  2. ※2国土地理院は北緯37度30分52秒、東経137度42分44秒としている。少しずれるのは、海抜0メートルのデータを陸とするか海とするかによる。
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