Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第403号(2017.05.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆2015年6月に国連総会で採択された国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に関する総会決議69/292は、法的拘束力のある文書の作成と、その条文草案の要素について検討する準備委員会の設置を決定した。準備委員会においては、①利益配分に関する問題を含む海洋遺伝子資源、②海洋保護区(Marine Protected Area: MPA)を含む区域型管理ツール等の措置、③環境影響評価並びに④能力構築および海洋技術移転の4つの主題について議論が行われている。その会議における重要な検討課題は、MPAを公海に設定することは可能か、また可能な場合にはその内容をいかなるものとすべきかである。
◆森下丈二氏からは、その先駆けともいうべき、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)によって2016年10月に南極のロス海に設立された世界最大のMPAについてご寄稿いただいた。MPA といえば、とかく漁業や他の人間活動を永久に禁止した漁獲禁止海域ととらえる向きが多いが、国際自然保護連合(IUCN)の類別にあるように、MPA の概念の中には、自然生態系の持続可能な利用のための資源管理保護区という考え方もある。森下氏によれば、今回のロス海MPA は目的と機能が異なる複数の海域(漁業が禁止される一般禁止海域と漁業を通じて科学データを収集する特別調査海域)の組み合わせであることが紹介されている。MPAがめざすのは、海洋生態系の保存と管理であり、科学的不確実性が存在する海洋生態系につきモニタリングを通じてその不確実性に対応していく順応的管理の考え方であるという指摘は、傾聴に値する。
◆トランプ時代の日米の海洋安全保障協力について、渡部恒雄氏よりご寄稿いただいた。国連安保理決議に違反する弾道ミサイルの発射や核実験を繰り返す北朝鮮の行為により朝鮮半島有事の危険性がさらに高まっている。膨大な海洋を含むアジア太平洋地域の安定は、日米にとって喫緊の課題である。海洋秩序維持のための日米の海洋安全保障協力は日本の最大の戦略課題であると指摘する本論稿は、その意味で、時宜にかなったものといえよう。
◆東日本大震災から6年目の2016年11月、300人の参加者を得て、「海洋教育こどもサミットin東北」が開催された。谷山知宏氏からは、東日本大震災の影響で「海に親しむ活動」がほとんど行われなくなった気仙沼市における、「学びの場としての海」を取り戻す活動についてご寄稿いただいた。本稿では、「海と生きる」を震災復興のテーマとしている気仙沼市による「海洋教育」への取り組みが紹介されているが、「震災で失ったものは多いが、学びを通じて『地域に貢献したい』『自分も人の役に立ちたい』という使命感をもった子どもたちが育っている」との文章に接すると、日本の将来について光明を見出した思いがする。ご一読をお勧めしたい。 (坂元)

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