Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第401号(2017.04.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆博覧強記の秋道智彌、山形俊男前編集代表に代わり、この号から編集代表を引き受けることになった。緊張を強いられる船出であるが、人と海洋の共生を目指す総合的な議論を行うオピニオン誌という理念に沿って、編集の責任を果たしてゆきたい。読者諸賢のご支援とご鞭撻をお願いしたい。
◆那須 卓氏からは、海洋石油・天然ガス開発を行っている8カ国の環境影響評価の規制制度の調査について、ご寄稿いただいた。石油・天然ガス開発に特化した環境影響評価制度を採用する英国、ノルウェー、オーストラリア、ブラジル、南アフリカと、他の事業も含めた一般的な環境影響制度を採用する米国、マレーシア、インドネシアがあるという。法学者の発想では、前者を「特定的アプローチ」、後者を「一般的アプローチ」と整理して終わりだが、今回の調査の注目点は、異なるアプローチをとる5カ国(米国、英国、ノルウェー、オーストラリア、ブラジル)につき「影響要因」を縦軸に、「環境要素」を横軸に整理することで、環境保全対策として「何を重要視しているか」との特徴を抽出するとともに、国際条約遵守のための対策と漁業への配慮などの社会環境影響も考慮する各国の実行が紹介されている。日本においては後者が重要であろうが、これらの調査が日本の海洋環境保全に貢献することを期待したい。
◆島根半島における風土を地域住民が再認識し、内外へ向けてその魅力をアピールするジオパークの構想について、野村律夫氏からご寄稿いただいた。733年に朝廷に献上された『出雲国風土記』に記されている「国引き神話」にある八束水臣津野命という神の「河船のモソロモソロ(重そう)に」と陸塊を綱で引く様子は、プレート運動とともに陸塊が水平に移動する地球科学の構造運動論と視点が共通するという。当時の朝鮮半島と日本海側の人々の交流を通じた自然地形の類似性の発見が、「国引き神話」を生み出したとの指摘は興味深い。「ロマンチシズムは、距離の文学で、その距離には、空間の距離と時間の距離がある」といわれるが、その双方を兼ね備えた神話の世界を堪能してもらいたい。
◆山崎友資氏からは、海の天使と呼ばれるクリオネと海洋酸性化の関係を論じていただいた。海の酸性化の問題は、二酸化炭素の溶解特性からクリオネが生息する高緯度の海から進行するので、クリオネ類が偏食する巻貝の一種であるミジンウキマイマイに影響が生じるという。海水中からアラゴナイト結晶の貝殻を作るのに必要な材料を調達できずミジンウキマイマイが絶滅してしまうと、食物連鎖により、クリオネもやがて絶滅するとのことである。海と陸の生態系が健全であるとして、ユネスコ世界自然遺産に登録された知床半島周辺海域で起こっている現象に注目してもらいたい。同時に、こうした企画展を行うミュージアムが海洋教育に果たす役割を再認識した。なお、この編集後記は、今後は坂元と窪川が交代で執筆する予定である。 (坂元)

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