Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第386号(2016.09.05 発行)

DRIVE GREEN PROJECTと環境への取り組みについて

[KEYWORDS]船舶/環境保全/技術開発
川崎汽船(株)執行役員兼技術グループ長◆中野豊久

私たちは、海運事業者として、物流を通じて人々の豊かな暮らしに貢献するとともに、この青く美しい海と持続可能な社会とを次世代に伝えていく使命を担っていると考えています。
その先の未来の子供たちへ、青い海をつなぐための環境ビジョンのマイルストーンのひとつとして、私たちはDRIVE GREEN PROJECTに取り組み、次世代環境フラグシップを竣工させました。

青い海を明日へつなぐ ~ 環境ビジョン

環境ビジョン2050『青い海を明日へつなぐ』
https://www.kline.co.jp/news/detail/1202374_1454.html

国際間で輸送される物流のおよそ99%(重量ベース)が船舶で輸送されています。地球環境問題の深刻化は、元来低負荷である海運事業者にも多くの課題を投げかけており、持続可能な社会を実現していくための環境保全の必要性はますます高まっています。
私たちは、青い海を明日へつなぐため「海洋汚染・生態系」「エネルギー資源」「地球温暖化」「大気汚染」の4つの重要課題を特定したうえで、長期の環境指針『環境ビジョン2050~青い海を明日へつなぐ』を2015年3月に策定しました※1
さまざまな輸送手段のなかで、船舶による輸送は一度に大量のモノを輸送できる非常に効率的で環境に優しい輸送手段ですが、舶用ディーゼル機関は重油を燃料とするため、排出ガス中には地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の他に、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)など、酸性雨や光化学スモッグを引き起こす因子が含まれており、環境に及ぼす影響は無視できません。世界最先端の船舶技術を結集して、究極の省エネと環境保全を追及する「DRIVE GREEN PROJECT」は、この環境ビジョンのなかでも「環境フラグシップの建造と実証」として重要なマイルストーンとして位置づけられています。

環境フラグシップ「DRIVE GREEN HIGHWAY」竣工

川崎汽船の「DRIVE GREEN HIGHWAY」

2016年2月、横浜大さん橋にて、世界最大級(長さ200m、幅37.5m、高さ38.23m)、かつ、最先端の環境技術がぎっしり詰まっている自動車専用船、次世代環境フラグシップ「DRIVE GREEN HIGHWAY(ドライブ・グリーン・ハイウエー)」をご披露、一般公開致し、大勢の方にその勇姿をご覧頂きました。赤と白を基調とした船体に、「DRIVE GREEN」の文字が記されたこの船は、ジャパン マリンユナイテッド(株)有明事業所で建造された「DRIVE GREEN PROJCT」の集大成となる大型船です※2
最先端の環境技術を詰め込んだDRIVE GREEN HIGHWAYは、輸送車両1台あたりのCO2排出量を既存大型船と比較し25%以上、NOxは50%以上、SOxは90%以上の削減を可能としており、NOx / SOx排出規制も先取りして達成しています。また、この船は、2016年6月に拡張されたパナマ運河通行を見据えた幅広デザインを採用した新船型船で、従来の大型自動車船から積載台数を約1,000台アップし、約7,500台もの車両積載能力を持つとともに、鉄道車両、建設機械、プラント貨物など大型貨物の輸送力も高めており、最先端の環境技術も含めて「すべて投入した船」となりました。
このプロジェクトによって、環境に優しい未来の海運の絵姿を先行して実現、公開することにより、対象船のみならず、環境対応のソリューションのひとつとして、業界全体のモチベ-ションが高まることや、さらなる改良や技術の発展に寄与できればと考えています。

関係者の力が結集した環境技術導入

環境設備は多岐に渡りますが、主要なものを以下に、ご紹介いたします。

  1. 1)排気の浄化:硫黄酸化物に対処するスクラバー
    排気ガスラインに国内で新たに開発されたスクラバーという大型の脱硫装置(高さ12.5m×太さ4m)を設置し、エンジンからの排気ガスに海水、または水を霧状にして吹き付けることで、排気ガス中のSOxやPM(粒子状物質)を除去しています。この装置は主機だけでなく発電用エンジンからの排気ガスも処理ができ、また、処理後の水は中和剤で中和し、船外に排出できる機能も持っています。排ガス中に含まれるSOxを削減するためには燃料自体を低硫黄燃料に変更する対応策もありますが、低硫黄燃料は従来の燃料に比べ高価であることより、従来の燃料油をこれまで通り使用できるスクラバーの設置は、経済性の面でも有効な選択枝となり得ます。
  2. 2)排気の浄化:窒素酸化物と二酸化炭素削減に対処する環境対応型主機関
    本船の主機はNOx三次規制対応の新技術を国産メーカーが実用化したエンジンで、EGR(排ガス再循環装置)、水エマルジョン燃料装置、シーケンシャル過給機、過給機カット装置を装備し、これらの機器を複合的に利用する事により、NOxとCO2の両方の排出量削減を達成しています。燃料油に水を添加する「水エマルジョン燃料装置」と、排気ガスを掃気に還流させるEGRの組み合わせによりNOx排出量を大幅に低減すると共に、エンジン出力に応じて効率的な過給機の運転を自動制御する装置も搭載しており、総合的なNOxの排出削減を行いながら、同時にCO2排出低減も行っています。
  3. 3)クリーンエネルギーに対処する太陽光発電とLED
    屋上に船舶用としては世界最大級となる合計912枚の太陽光発電パネルを設置し、最大発電時には一般家庭約300軒分に相当する電気を発電することができます。また、太陽光発電システムから給電する、車両甲板など船内のほぼすべての照明に、省エネ型LEDランプを採用しております。
  4. 4)生物多様性保全に対処するバラスト処理装置
    バラスト水の越境による環境問題に対応するために、バラスト水を処理する装置も搭載しています。
  5. 5)船内生活向上に対処する水耕栽培装置
    乗組員に新鮮でおいしい野菜を食べてもらうことや、船内生活における癒しの提供などを目的に、水耕栽培システムを搭載し食用野菜を育成しています。内航船では事例がありますが、外航船での導入は初めての試みです。
    その他、高効率プロペラ、冷却海水ポンプならびに機関室通風装置のインバータ制御、発電機エンジン排ガスエコノマイザ、ボイラー水エマルジョン装置、低摩擦塗料、遮熱塗料、最適運航支援システムなどの多様な省エネ・CO2削減技術を採用しています。
    新技術を含む環境設備を導入したDRIVE GREEN HIGHWAYの建造は、単独ではとても実現できるものではなく、造船所や機器メーカーなど多数の関係者が力を結集し、加えて国土交通省や一般財団法人日本海事協会の技術開発に対する支援スキームを活用することで実現したものです。協力をいただいた関係者の皆様には心より感謝しております。また、就航後も引き続き、さまざまな実験を行い、データを収集して結果を分析していく予定です。
    2050年、さらにその先の未来の子供たちにも、この青く美しい海を伝えるとともに、世界の人々の豊かな暮らしに、今後とも貢献していきたいと考えております。(了)
  1. ※1川崎汽船環境保全への取り組みについてhttp://www.kline.co.jp/csr/environment/index.html
  2. ※2DRIVE GREEN HIGHWAYの建造の動画http://www.kline.co.jp/movie/1202678_2631.html
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