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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第325号( 2014.02.20 発行)
第325号(2014.02.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆科学研究と社会とのかかわりが現在いろいろな場面で議論になっている。サイエンス・フォー・ソサエティ(社会のための科学)、サイエンス・イン・ソサエティ(社会における科学)、そしてサイエンス・ウィズ・ソサエティ(社会とともにある科学)などがそのキーワードといえるだろう。わたしはいずれにも与しないが、上記3つの観点を統合するには、サイエンス・インフォーウイズ・ソサエティ(社会にあって、社会のためにともにある科学)という和製英語について友人と飲みながら話したことがあった。本号で総合地球環境学研究所の高木 映氏は、今後の地球を考えるビッグ・プロジェクトの紹介をされている。それがフューチャー・アース(略称:FE)であり、陸域ではなく海に焦点を合わせると、海の未来についての統合的な研究、フューチャー・オーシャンの推進が期待されていることになる。
◆わが国には総合海洋政策本部があり、省庁の縦割りを超えた取り組みが進められている。海洋の研究分野では越境性をキーワードとした相互交流と連携の必要性が謳われている。少し前、京都であった教育関係の研究会で講演し、海洋教育の中味が多岐にわたること、総合性が重要な視点であることを強調した。先日も下村文部科学大臣が竹島の領有問題と尖閣列島の位置づけについて教科書に明記すべきとの発言をされている。教育的な観点からはわかっていることをはっきりいうべきであるが、自然科学の場合と違って歴史や文化にかかわる問題は微妙な解釈の相違点があり、思想的な基盤が異なると、180度異なる結果になることもある。自然と歴史・文化を総合して考えるのは実のところとても難題であり、フューチャー・オーシャンの挑戦的な取り組みに期待したい。
◆海の社会教育の現場では水族館が大きな役割を果たすことは間違いない。新江ノ島水族館の学芸員としてお仕事をされている小谷野有加さんは外からはなかなかわからない水族館の多様な活動について紹介されている。上述したフューチャー・オーシャンにおいても研究者は現場からの声に耳を傾けるべきだろう。
◆小中学校の子どもにダイビングは教えない。しかし、夏の臨海学校はすたれ、学校内のプールが格段に整備されたが、海はますます遠い存在となった。私は臨海学校の振興を図るとともに皮膚感覚で海と接することがこの先も重要と考えている。海や川でのふれ合いが海難・水難事故につながるとする意見の保護者がおられるが、安全安心の確保こそが教育されるべきだ。筑波大学大学院の白田佳子教授は航空機に搭乗したさいのライフ・ベストの意義や不時着水時のキャビン・アテンダントの対応についてご自身の経験をふまえ、装備の重要性と安全性の確保に向けての思いを語っておられる。それにしても、安全性を確認することは忘れがちであり、訓練=教育がいかに大切であるかを教えられた。備えあれば憂いなし、ということか。(秋道)

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