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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第308号( 2013.06.05 発行)
第308号(2013.06.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表((独)海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男

◆北極評議会の第8回閣僚会議が5月15日にスウェーデンのキルナで開催され、日本、中国、インド、韓国、イタリア、シンガポールが新たに常任オブザーバー国として承認された。北極評議会とは北極圏の開発や環境保護について、周辺8カ国(カナダ、米国、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン)と先住民族が話し合う場として、1996年に、オタワ宣言に基づき発足した政府間協議体である。今回の決定で常任オブザーバー国は既に承認されていたイギリス、オランダ、スペイン、ドイツ、フランス、ポーランドと合わせて12カ国になる。
◆地球温暖化の影響は陸域の多い北半球で顕著に表れ、特に北極海域の海氷域面積は年平均値で、毎年5.9万平方キロメートルも減少している。海氷が溶解することで、地球温暖化は緩和されているが、一方で北極域環境の急速な変化は生態系やそれに依存する先住民の生活に深刻な影響を与えており、対策に向けた調査研究が重要になっている。海氷域の減少には正の効果もあり、北極海航路の可能性を広げ、世界の通商海図を大幅に変える可能性がある。大航海時代に後発国として登場したイギリスやオランダはスペインやポルトガルの通商覇権を打破すべく、16~17世紀に北極海航路の開拓に挑戦した。しかし、当時の気候状態は厳しく、悲惨な結果に終わったが、今、これが可能になりつつある。加えて、豊かな地下資源への各国の関心も深い。
◆オブザーバー国は北極評議会の意思決定に直接かかわることはできないが、意見を表明できる。かけがえのない北極海域の適切な管理運営をめざして、また南極条約のような国際ルールの導入に向けて、わが国は影響力を発揮してゆくべきである。今回の朗報は関係者の並々ならぬ努力とわが国研究者の北極域調査研究への長年の貢献に対する賜物である。
◆今号は、再生可能エネルギーを供給するエースとして躍り出る可能性のある洋上風車、特に浮体式風車について、鈴木英之氏に専門家の立場から解説していただいた。洋上設備は陸上設備に比較して、発電効率や環境面で大きな優位性を持つ。一方で、その設置、保守には比較にならない困難さが伴う。オランダなどの風力エネルギー先進国の経験なども参考にしつつ、費用対効果を充分に吟味して推進すべきであろう。
◆赤松友成氏には魚群の実態を詳しくとらえることができる水中音響探査技術の進歩について解説していただいた。海の生物資源の詳細な三次元可視化技術がわが国で開発されたのである。歴史は見る技術の進歩が科学を発展させる原動力となってきたことを示している。開発された画期的な技術を磨きあげ、広域に展開するならば、水産分野にとどまらず、海洋生態学も大きく書き換えられるのではないだろうか。
◆鈴木隆史氏にはワシントン条約のサメ保護に関する、新たな決議の問題点を指摘していただいた。環境や生態系の保全は、感情に流されることなく、科学的知見に基づくべきである。里山、里海の概念は生態系保全が持続可能なビジネスモデルでもなければならないことを示している。各地における持続可能なビジネスモデルが豊かな地域文化を育んできたことを私たちはもっと強く世界に発信すべきである。(山形)

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