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国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)政府間会議の組織的事項会合の報告

2018.05.21

 2018年4月16日から18日の3日間、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全と持続可能な利用に係る政府間会議(IGC※)の組織的事項を取り決める会合が、アメリカ・ニューヨークの国連本部で開催されました。本会合は2018年9月から開始される本格的な政府間交渉に先立ち、その組織的事項を議論するために開催されたものです。会合における主な決定事項は以下の通りです。

 

 ※ Intergovernmental Conference on an international legally binding instrument under the United Nations Convention on the Law of the Sea on the conservation and sustainable use of marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction (General Assembly resolution 72/249)

政府間会議の様子写真

政府間会議の様子

決定事項

 まず、BBNJに関する政府間会議の議長として、シンガポールのレナ・リー氏が選出されました。そして、議事進行をする上で議長を支援する事務局(bureau)の設置が決定され、事務局はレナ・リー議長および国連が定める5つの地域から3名ずつ選ばれた15人の副議長から構成されることが決定されました。事務局の任務は会議の議事手続きに関する事項に限られること、副議長の任命は個人の裁量ではなく、選出国の裁量によるものであること、副議長は必要な場合を除き、IGC期間中を通じて一貫性を維持するため同一メンバーが務めることが決定されました。また、IGCの議論を進める際に、全体会議(plenary session)に加えて、必要に応じてテーマ毎のより詳細な議論を行う補助機関を設立する方向性が示され、その名称が「非公式作業部会」あるいは別名になるかについては、今後、検討されることになりました。テーマ毎の議論を行う場合には、同時会合(parallel meeting)形式は採用せず、(比較的規模の小さな外交団もすべての議題を取りこぼすことなくカバーできるよう)順番に会合を開催することが示唆されました。

 さらに、2018年9月に開催される第1回政府間会議では、組織的事項に関する議論は最低限にとどめ、BBNJに係る具体的な議論を進めること、第2回政府間会議を含む2019年の会議日程については、国連総会の判断にゆだねられることが言及されました。さらに、BBNJに係る政府間会議の主要な4つの議題⦅海洋遺伝資源(利益配分の問題を含む)、区域型管理ツール(海洋保護区を含む)、環境影響評価、能力構築・海洋技術移転⦆に関して、柔軟性をもって各議題の時間配分を行い、議論が進められることが決定されました。第1回政府間会議に向けて、議長は2016年から2017年にかけて開催されたBBNJ準備委員会での決定事項をもとに、今後も議論が必要な問題およびある程度絞り込まれた質問事項をまとめた簡潔な文書を2018年8月25日までに作成するとのことです。本文書の位置付けは、BBNJの利用と持続可能な利用に係る新協定の素案(ゼロドラフト)作成の道筋へと導くための一つの出発点であり、条約のテキストを含むものではなく、ゼロドラフトそのものを構成するものでもないと明言されました。

 

海洋政策研究所共催サイドイベント報告

 また、本会合の会期中に、交渉に関係する情報提供・政策提言のためのサイドイベントが開催されました。笹川平和財団海洋政策研究所は、4月17日に国連トンガ王国政府代表部、グローバル・オーシャン・フォーラム、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)、国連食糧農業機関(FAO)らとの共催で、「BBNJ新国際協定の重要な側面としての能力構築」というテーマでサイドイベントを実施しました。イベントには政府や国際機関、NGOの代表ら約85名が参加し、活発な議論が行われました。

サイドイベント - 登壇者や政府代表を含む参加者写真

サイドイベント - 登壇者や政府代表を含む参加者


 海洋政策研究所からは前川美湖チーム長兼主任研究員と藤井巌研究員が参加し、日本財団および笹川平和財団が過去30年にわたり取組んできた海洋分野の人材育成事業に関する概要を説明し、とりわけ規模の大きい世界海事大学への奨学金プログラムの成果および今後の課題等について報告を行いました。海洋政策研究所およびその他登壇者の発表資料はこちらから閲覧可能です。
(左)左から:世界海事大学教授 ローナン・ロング教授、国連トンガ王国政府代表部 スカ・マンギシ次席大使、 グローバル・オーシャン・フォーラム ビリアナ・シシン・セイン教授 (右)笹川平和財団海洋政策研究所 前川美湖チーム長兼主任研究員写真

(左)左から:世界海事大学教授 ローナン・ロング教授、国連トンガ王国政府代表部 スカ・マンギシ次席大使、 グローバル・オーシャン・フォーラム ビリアナ・シシン・セイン教授 (右)笹川平和財団海洋政策研究所 前川美湖チーム長兼主任研究員

写真(左)ユネスコ政府間海洋学委員会 ジュリアン・バービエレ海洋政策地域調整部長 (右)左:グローバル・オーシャン・フォーラム ミリアム・バルゴス上席研究員 右:グローバル・オーシャン・フォーラム マリオ・ビエロス上席研究員

(左)ユネスコ政府間海洋学委員会 ジュリアン・バービエレ海洋政策地域調整部長 (右)左:グローバル・オーシャン・フォーラム ミリアム・バルゴス上席研究員 右:グローバル・オーシャン・フォーラム マリオ・ビエロス上席研究員

 本サイドイベントは、グローバル・オーシャン・フォーラム、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)、笹川平和財団海洋政策研究所らが共同執筆している「BBNJ新国際協定の重要な側面としての能力構築に関する政策提言書」の作成に向けた初期的な調査結果の発表を主眼に開催されました。本政策提言書では「各地域の多様な需要や能力、既存の能力構築事業を鑑みた能力構築・海洋技術移転のあるべき姿、関連するクリアリングハウス・メカニズムおよび資金調達」に焦点が当てられています。本報告書の最終成果については、2018年9月の第1回政府間会議のサイドイベントにおいて報告する予定です。

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