2001年度の事業内容





それぞれの島社会の価値観や文化的アイデンティティを尊重した交流事業



 太平洋島嶼国メディア関係者交流


実施者・・・・ 笹川平和財団
        Pacific Islands News Association, PINA(フィジー)
       (自主・委託)
事業年数・・・5年継続事業の3年目
決算額・・・・ 3,641,037円


太平洋島嶼国と日本は、民間投資や開発援助の増加に伴い、年々関係が深まっています。笹川太平洋島嶼国基金では、同地域における日本理解の促進を目的に、約10年間に60人以上の太平洋島嶼国のメディア関係者を日本に招へいしてきました。この事業の成果が評価され、さらに5年の継続が決定したのが本事業です。
本年度は2003年に予定されている日本政府主催の「第3回島サミット」を視野に入れて、産経新聞編集局社会部加納洋人記者がフィジー・キリバス・ツバル・パラオ・マーシャル諸島・ミクロネシア連邦の太平洋全域に出張取材し、環境・政治・経済・教育と広い分野で同紙に連載記事を執筆しました。招へいに関しては、基金の自主事業「太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会」で開催した「世界情報社会サミット・アジア太平洋地域会合」のサイドイベント、及び本会議にフィジー、グアム(サイパン)、パプア・ニューギニアから3名のメディア関係者を招へいしました。諸般の事情により当初の計画通りではありませんでしたが時宜を得た取材活動によって、日本と太平洋島嶼国間の現状について発信し相互理解を深めることに寄与しました。




 太平洋やしの実大学


実施者・・・・笹川平和財団(自主)
事業年数・・・5年継続事業の3年目
決算額・・・・ 5,228,685円

笹川太平洋島嶼国基金は、1994?96年に島嶼関係者を集め、太平洋島嶼国と日本の相互理解・協力について自由に話し合う「島を語る会」を開催しました。その結果、国内の太平洋島嶼国理解を目的として生まれたのが「やしの実大学」です。第2フェーズ3年目となる本年度は、2002年6月1日〜2日、沖繩・八重山諸島の新城島・黒島で「海の文化を訪ねる〜ジュゴンの島・新城島、航海の島・黒島〜」というテーマのもと、3名の講師を招き講義を行いました。(ハワイ大学PEACESAT事業部長クリスティーナ・ヒガ「探検航海・私たちの遺産ー海洋文化」、建築家團紀彦「新城島と黒島を訪れて」、沖繩県立図書館八重山分館長砂川哲雄「新城島とジュゴン(ザン)−その盛衰の歴史」)また島民の案内でフィールドスタディも実施しました。8月には八重山の高校生2名が石垣市姉妹都市のカウアイ島を訪問し学校訪問、市長表敬、ホームスティなどを実施し、帰国後新聞で大きく取り上げられました。昨年度に引き続きやしの実大学バーチャルクラス(www.yashinomi.to)では太平洋情報発信に努めました。また、本年度から太平洋のメディアが発信するニュースを毎週約10本和訳し掲載しています。さらに100名が新たにバーチャルクラスに入学し、現在約300名の学生がオンライン登録しています。




 太平洋島嶼地域の社会科学・歴史教育開発


実施者・・・・サモア国立大学
       National Uiversity of Samoa/サモア(助成)
事業年数・・・3年継続事業の3年目
決算額・・・・2,504,410円

太平洋島嶼地域は、旧宗主国の残した教育システムの中で歴史教育を行っていました。しかしその教科書は、島の人々自らが書いたものではありませんでした。そこで当基金では、1995年から5年間、現地の歴史教師を中心とした教材開発と、それにあわせた教師連盟の設立に助成してきました。その結果、99年には太平洋歴史・社会科学教科教師連盟が設立され、事務局をサモア国立大学におき、島の人々のイニシアチブによる事業展開ができるまでになりました。事業が開始された2000年度はフィジーとソロモン諸島のクーデターの影響を受けましたが、教材・指導書の開発、情報交換や教師の質的向上を目的としたワークショップを2000年10月、サモアにて開催しキリバス、フィジー、トンガ、米領サモアより計10名が参加しました。また『Guide for First Year History Teachers』(指導書)の編纂を開始しました。2年目の2001年度は、10月にメラネシア地域ワークショップ(於バヌアツ)、12月にポリネシア地域ワークショップ(於トンガ)が開催されました。バヌアツのワークショップでは、博物館の歴史教育への利用方法について議論がなされ、成果物として『Pacific History, Museums and Cultural Centres-A Guide for History Teachers』が編纂されました。 最終年度にはバヌアツ及びサモアでのワークショップの開催が予定されていましたが前者は責任者となっていた教師が辞職し、後任の責任者が決まらなかったため、また後者は太平洋歴史協会総会と日程が重なり、ワークショップの責任者が総会のコーディネーターを兼任しなければならなかったため、中止、延期となりました。なおサモア、バヌアツ、ニューカレドニアの各教師連盟が、国内事業として、史跡フィールドスタディ、ワークショップ、歴史・社会科学教師間の情報意見交換会議を実施しました。2000年に編纂が始まった『Guide for First Year Histry Teachers』が出版される運びとなり、各国の教師に配付されました。また新たに『The use of Museum for the teaching of History in schools』の編纂を開始しました。





ミクロネシア地域を中心にしつつ域内の調和を図るための事業





 ミクロネシア地域における遺跡保護管理の人材育成


実施者・・・・グアム大学
       University of Guam/米国 (助成)
事業年数・・・3年継続事業の3年目
決算額・・・・3,863,500円

当基金は、1996?98年の3年間、ハワイのビショップ博物館に助成し、太平洋島嶼地域の考古学専門家を養成するパイロット事業を行い、成功を収めました(「遺跡記録者・考古学助手養成プロジェクト」)。この経験をもとに、ミクロネシア地域で遺跡の発掘と管理に関する講義や実地訓練を行うことが本事業の内容です。このことにより、長い植民地時代に破壊された遺跡の発掘・修復によって文化的アイデンティティを再確認し、健全な経済発展・自立を目指しています。
初年度は研修地であるパラオ、ポナペでデング熱、コレラが流行したため十分な研修が実施できませんでしたが、2年度はパラオ(2001年9月7日〜28日)で9人、ポナペ(2002年1月8日〜2月1日)で6人の研修生が、また3年度はパラオ(2002年6月24日〜7月26日)で9人、ポナペ(2002年12月30日〜2003年1月27日)で14人の研修生が、講義や実地訓練を受けました。研修生はまた、コンピュータを利用し、写真・ビデオを使ったデータベースをつくる研修も受けました。さらにパラオでは、日本統治時代の遺跡(特に海中遺跡)を中心にダイビングの訓練による海中遺跡の保護管理の実地訓練を実施しました。講師にはオレゴン大学エイヤーズ博士、同大学博士課程在籍フィッツパトリック氏、カリフォルニアバークレー大学ディスカンテス博士、グアム大学ミクロネシア地域研究センター所長倉品博士、ビショップ博物館上席研究員篠遠博士など日米の研究者が参加し、協力して研修を実施しました。
今後は地元の教育機関や博物館とも協力し、教育面での成果の活用や観光関係者との協力において、観光資源としての文化遺産の保護管理についても協議・啓蒙活動を検討していきたいと思います。



 ミクロネシア職業訓練校の教員育成


実施者・・・・ ポナペ農業職業訓練学校
Ponape Agriculture & Trade School/ミクロネシア連邦
(助 成)
事業年数・・・3年継続事業の3年目
決算額・・・・ 609,730円

ポナペ農業職業訓練学校(PATS)は、35年の歴史をもつミクロネシア地域唯一の職業訓練校です。これまでに、地域の経済発展に貢献する人材を1000人近く育成してきましたが、冷戦終了後、米国の同地域への資金援助が大幅に削減され、PATSの運営も影響を受けました。しかし、同校がミクロネシア地域で果たす役割は大きく、PATSは学校運営の財政基盤を立て直しながら、人材を育成していく必要に迫られています。
このような状況の下、本事業は、地元出身の教員の質のレベルアップと教員数の増加を目的として、PATSの卒業生に対して卒業後2年間の研修を行っています。研修終了生は同校の教員やコミュニティの指導者として後輩の育成に従事することが期待されています。9月始業5月終了の学期システムの同校では、2001年9月に2年生となった3名の研修生(マーシャル諸島、チュック、ポナペ出身)が2002年5月に2年間の研修を終え卒業しました。他方、2001年9月に入学した4名の1年生は研修内容についていけずやむ終えず帰国させる結果となりました。3年間の助成期間中に地元の指導者養成を目的に始めた本事業は、結果として4名の新任教師を育成することができましたが、途中で挫折する生徒も多く、研修内容の改善を迫られています。この3年間の試行錯誤の経験から、教育育成のニーズの再確認、研修内容、指導体制のあり方など多くを学ぶことができましたが、2002年5月の学期末で一旦事業を見直し、2003年以降に新体制で再開することを検討することになりました。





遠隔教育事業を中心とした人材育成事業





 南太平洋大学法学部インターネットコースの開発


実施者・・・・南太平洋大学
University of the South Pacific/フィジー(助成)
事業年数・・・3 年継続事業の2年目
決算額・・・・ 4,895,510円

太平洋島嶼国は、旧宗主国の法制度を引き継ぎ、伝統的慣習との共存の中で国づくりを行っています。法制度の整備と国民への教育は、新生国家の平和と安定のための重要課題です。本事業は、太平洋の島々の人々に遠隔教育を行ってきた南太平洋大学(USP)で、法学部コースを受講する遠隔地の学生に、質の高い教材や双方向の授業を提供することを目的としました。本年度は、初年度に引き続きUSP法学部のウェブサイト (www.vanuatu.usp.ac.fj)の約20の講義科目を編集・新規開発しました。また、Web Siteのシステム開発に重点を置き、教授及びスタッフが自らWeb Site上に講義科目などをセットアップし、少しのトレーニングで自由に内容の編集を行えるようにしました。Web上のディスカッショングループシステムも改善し、遠隔地からの参加を積極的に促す効果がありました。本事業は、遠隔教育を基盤とする南太平洋大学全体に対して「バヌアツ・モデル」として認められ、主導的な役割を担っています。




 西太平洋地域における遠隔教育連盟設立支援


実施者・・・・グアム大学
       University of Guam/米国(助成)
事業年数・・・ 5 年継続事業の2年目
決算額・・・・ 6,319,000円

地域協力の枠組みがなかった西太平洋島嶼国には、単発的な遠隔教育の試みはあっても、組織的な遠隔教育の制度はありませんでした。そこで、2000年度実施した「西太平洋地域における遠隔教育の基盤整備」事業において、域内の関係者を集めた政策会議が開催され、西太平洋遠隔教育連盟の設立が提案・合意されました。
2001年度から開始された本事業ではニーズ調査と遠隔教育政策案策定の後、本年度は遠隔教育連盟の設立と具体的な事業計画案策定に向けてグアム大学においてミクロネシア地域の教育・医療・通信関係者総計60名を招へいし会議を開催しました。会議では各学校間の単位の交換制度、遠隔教育による単位取得システムの開発、コミュニティへの生涯教育プログラムの開発など遠隔教育実施のための具体的な事業計画を協議し会議の成果として『Micronesian Regional DE Plan』が策定されました。




 遠隔教育による南西太平洋の文化遺産保護管理訓練


実施者・・・・オーストラリア国立大学
Australian National University/オーストラリア(助成)
事業年数・・・3 年継続事業の2年目
決算額・・・・ 8,189,500円

近代化の流れの中で文化的・社会的変化が激しいパプアニューギニアとバヌアツでは、文化遺産が適切に管理されず、崩壊の危機にさらされています。また、文化遺産に関する研究は欧米の学者・専門家が主導して行ってきたため、現地の人材が少ないのが現状です。独立後の歴史教育が遅れる中、歴史の掘り起こしと同時に、教育現場への普及が課題となっています。
本年度は、パプアニューギニア北部の離島、マヌス島とバヌアツのマレクラ島でフィールドスタディを行いました。中央政府や地元コミュニティの許可を得たフィールドスタディには、地元の文化遺産保護管理を担当する関係者がそれぞれ50人近く参加しました。その模様はラジオの特別番組や新聞の特集で広く報道され、さらに地元の学校やコミュニティでも講演会を行いました。また本年度は上智、ブリティッシュコロンビア、ハワイ大学の3名の日本人と台湾から千葉大学に留学中の1名の若手研究者が参加し、学術的研究のみならず現地コミュニティの文化遺産保護管理への貢献についても学びました。




 地域協力によるミクロネシアの遠隔教育開発


実施者・・・・ミクロネシアンセミナー
Micronesian Seminar/ミクロネシア連邦(助成)
事業年数・・・3 年継続事業の1年目
決算額・・・・ 3,380,200円

ミクロネシア地域は、独立後、米国から莫大な資金援助を受け、急激な近代化を進めています。しかしその一方で、近代化による社会のゆがみが、世界一高い青少年の自殺率をはじめ、さまざまな問題となって表面化しています。また、2万5000人以上のミクロネシア人が米国で就労・留学していますが、帰国後に母国の現状に対応できないという状況もあります。ポナペのミクロネシアンセミナーは、この地域で唯一、系統的にミクロネシア諸国のアーカイブをまとめています。これまでに、ウェブサイト(www.micsem.org)を立ち上げ、ミクロネシアンセミナーの図書館の資料1万6000点のカタログや写真資料などをデジタル化してきました。本年度はBrief History of Micronesia, Where were the Women?などの6つのオンラインアルバムを編集し地域の歴史・社会教育に資する教材を作成、Web Siteに掲載しました。またこれらをCD化しインターネットの環境が整備されていない50近い教育施設にも配付しました。









 太平洋島嶼国のデジタル・オポチュニティ研究会


実施者・・・・笹川平和財団(自主)
事業年数・・・2 年継続事業の1年目
決算額・・・・ 5,639,035円

情報通信格差の問題に関しその政策が国際協力の枠組みで活発に議論されていますが、アジア・アフリカ諸国に重点が置かれ、太平洋島嶼国がその議論に含まれることは極まれです。また太平洋島嶼国の情報通信政策は旧宗主国が主導しているのが現実で、日本国内での関心も低く、また一番重要な島嶼国の人々が積極的に関与できていない現状です。本事業は国内に情報通信政策関係者を集めた研究会を設置し、太平洋島嶼国の情報通信に関する現状を把握すると共に提言を盛り込んだ報告書を作成することを目的としています。
本年度は3回の研究会を実施すると共にミクロネシア、ニューカレドニアへ出張調査を実施。ほかにハワイ大学でのワークショップの開催や国連の事業「世界情報社会サミット・アジア太平洋地域会合」において太平洋島嶼国のサイドイベントを開催し、国際的な情報通信政策議論の場に太平洋島嶼国の問題を積極的に取り上げることに寄与しました。さらに日本の首相官邸が主導する「IT戦略会議」の具体的施策の一つである「アジア・ブロードバンド計画」に太平洋島嶼国の問題を盛り込むようパブリックコメントも提示しました。



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[COCONUTS通信] [やしの実大学]

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