近期工事は、長江支流漢江の丹江口ダムから取水し、唐白河平原北部及び黄淮海平原の西部縁に沿って輸水路の主水路を敷設し、自然流下法によって終点の北京市、天津市に到達する。沿線の湖北省、河南省、華北省、天津市、北京市に都市生活用水、工業用水、農業用水、及びその他の用水を提供することができる。
長期計画では長江三峡ダム、あるいはその下の長江主流から取水し、引水量を増やしていく。中央線は水質が良く、水量が安定で、供水範囲が広いという特徴がある。南から北へ、西から東へと自然に流下し、柔軟に供水することができるなどの利点がある。華北地区の水危機を緩和するための最適案である。
中央線の前期調査研究は、1950年代初期から始まり、40年間に長江水利委員会は、沿線の各省市と部門と協力して、大量の探査、観測、企画、設計、調査研究を行った。
1994年1月に水利部は長江水利委員会が編成した「南水北調中央線F/S」を審査し、国家計画委員会に申請を提出した。
中央線の取水量は、丹江口ダム後期工事の完成、正常貯水水位170m、2020年の発展レベルを考慮して漢江中下流で適当な補償工事を建設し、取水区の工業、農業、水運、環境等の用水を満足した後に可能な取水量は145億立米を維持することができる。渇水期(保証取水率75%、約110億立米の水を取水することができる)。
供水範囲は主に唐白河平原と、黄河、淮河、海河平原の中西部である。供水面積は約15.5万平方kmである。漢江からの取水量が限られており、計画中の供水区内の水需要を満足することができない。北京市、天津市、華北省、河南省、湖北省の五省市の都市生活用水と工業用水を主に供給し、その他の一部地区の農業用水を供給する。
南水北調中央線の主体工事は、水源区工事と輸水路工事の二つの部分から構成される。水源区工事は丹江口水利施設の増設工事と漢江下流の補償工事である。輸水路工事は漢江から引水する主水路と天津市に引水する主水路である。
![]() |
1970年代に完成した漢江丹江口水利施設は南水北調中央線の水源区工事である。丹江口ダムは漢江流域面積の60%をコントロールしている。平均年間徑流量は408.5億立米であり、水庫に流入する水量は393.4億立米である。上流の今後の発展を考慮すれば2020年にダムに流入する水量は385.4億立米で、水資源は比較的に豊富である。
丹江口水利施設は初期規模の基礎に計画通りに建設している。ダムを現在の162mから176.6mに、そして貯水水位を157mから170mにして水庫容量が2905立米にする。初期より水庫容量は116億立米が増加し、有効調整水庫容量は88億立米が増加することにより洪水災害を防止する水庫容量は33億立米が増加した。
丹江口ダムは水質がよく、地面水II類水の基準に達している。中央区主水路の引水線路の選定と工事構成時に水質保護の要請を考慮している。主水路の水質も地上II類水の基準を維持することができる。
丹江口ダムの増築工事完成後に正常貯水水位が170mに達した場合面積を水没されることになる。1992年現在の調査によると、水没による遷移人口が22.4万人、水没家屋が479.4万間、水没耕地が23.5万畝、工業企業と鉱業企業120社(村鉱業も含む)、水没固定資産総額(簿価)が1.2億元である。
引水が漢江中、下流の工農業及び水運等の用水に与える影響を避けるため主水路に興隆または碾盤山水利工事、東荊河の補水工事建設工事とウォーターゲート及び一部の航路の増築工事を予定している。
黄河以南の主水路は既設の主水路の起点と江淮の分水嶺である方城亜口と黄河横断箇所の範囲に制限され、走向が明確である。黄河以北は現存の輸水路を利用する案と新しい水路を建設する案があり、比較分析の結果、水質の維持と全線自然流下法による引水の両面から新しい水路の建設案を考えている。輸水路は陶岔渠の起点から取水し、既設の8kmの水路に沿って延長し、姚営過 河に達する。伏牛山南麓山前崗壟の平原との接続区間から東北へ延長する。南陽北を通って白河を通過してから江淮分水嶺の方城亜口で淮河に流入する。魯山県楼子張のところで沙河を通過して東北へ曲り、宝豊西寓州西、新鄭西で北へ向かって鄭州西北の孤柏咀で黄河を横断する。そして太行山東麓の平原、北京―広州鉄道の西側から北上する。焦作市東南、輝県北から
王墳、淇県、安陽西から豊楽鎮河、邯鄲市西、刑台市西、石家荘市の西北を通過して唐県で低い丘陵地区と拒馬河の沖積扇を通って恵南荘で北拒馬河を通過して北京に入り、永定河に流入し終点の北京市内の玉淵潭に入る。輸水主水路全長1245.6kmである。
天津市の主水路は、河北省徐水県西黒山村北輸水路主水路から分水し、東へ天津市に入り、全長143.6kmである。
輸水主水路起点の設計水位は147.2mで終点水位は49.5mであり、全線が自然流下法を利用する。主要制御ポイントの水位、流量は下記の通りである。
| 制御ポイントまたは水路区間 |
設計流量(立米/s) |
設計水位(黄河標高m) |
| 水路起点〜方城 |
630(800増加) |
147.2〜132 |
| 黄河横断箇所 |
500 |
118.5〜107 |
| 河北省に入る箇所 |
380〜440 |
91.5 |
| 北京市に入る箇所 |
70〜90 |
60.3 |
| 玉淵潭に入る箇所 |
40 |
49.1 |
| 天津市主水路 |
70〜90 |
65.3〜2.5 |
水路の傾斜度については、黄河以南1/25000で、黄河以北1/30000〜1/15000である。水路全線の地質条件は異なるためそれぞれコンクリート、セメントの流し込むなどの方法で全断面にてセグメントを行う。
水路の設計水深は設計流量に従い、南から北へ起点の9.5米から北京の3.5米まで逓減し、底幅は56〜7mである。
主水路の工事地質条件と主要地質問題点はほぼ判明している。膨張土と黄土類地帯の水路堤の安定性と飽和土砂区間の振動による液化問題、高地震区間の地震予防の問題、石炭区通過時の圧石炭問題と陥没問題などについては設計の段階に相応の措置をとっている。
主水路は、長江、淮河、黄河、海河の四大流域を貫通し、黄河横断の主水路とその他の河川の流域は面積10平方kmの河川が603本あり、鉄道横断ヵ所は39ヵ所ある。そして主水路を横断する道路橋665本あり、制御ゲート、分水ゲート、放水水利施設、トンネル、地下水路等がある。主水路の各種の建造物は1672箇所あり、そのうち最大の工事は黄河横断工事である。天津の主水路は大小河川48条を通過し、建造物が179座ある。
主水路は黄河流域の桃花峪ダム区内で黄河を横断する。黄河横断工事は規模が大きく、複雑で総工費が大きい。主水路において最も重要な建造物である。多くの案を比較研究した結果、水路橋とトンネルサイフォン方式は技術的に実現可能だと判断されている。トンネル案は黄河の河勢と黄河全体企画との矛盾を避けることができるし、シールド工法は中国国内と海外にもたくさん経験しているので両岸の引水線路の配置と結びつけて孤柏咀トンネル案は推薦されている。
黄河横断トンネルは全長約7.2km、設計輸水能力500立米/S。全断面トンネル2本を予定している。
![]() |
|
工事内容 |
工事量 |
| 土採掘量 |
6.0億立米 |
| 石採掘量 |
0.6億立米 |
| 土石埋め戻し、建築量 |
2.3億立米 |
| コンクリート使用量 |
1583万立米 |
| セグメント用セメント |
718万立米 |
| 鉄筋、鋼材 |
70万トン |
| 永久性土地使用面積 |
42.2万畝(水没面積23.5万畝を含む) |
| 一時土地使用面積 |
11万畝 |
中央線工事を影響する主要な要素は、丹江口ダム区域の住民遷移と主水路工事の進み状況である。シールドマシンで黄河横断工事を実施すれば工期が6年間かかる。
1993年末現在の価格水準で計算する場合、静態で計算した総工費は約400億元を計上している。
中央線工事は北京市、天津市、華北省の地区の水資源危機を緩和することができる。北京、天津市、華北省、河南省に都市生活用水、工業用水を64億立米、農業用水30億立米が増加することができる。それによって受水区の生態環境と投資環境を大いに改善され、中国の中部地区の経済発展を推進することができる。
丹江口ダムの嵩上げは、漢江中、下流地域の洪水災害防止能力を高めることができ、漢江北部平原と武漢市の安全を保障することができる。
南水北調中央線工事完成後に平均年間経済効果が309.17億元である。そのうち生活供水の経済効果は年平均277.76億元で、灌漑及びその他の用水補充の経済効果は年平均26.55億元である。洪水防止の経済効果は4.86億元である。
南水北調は中国の水資源の最適配置を図る戦略である。地理条件と取水区の水資源量等の制限を受けるため、西線、中央線、東線の三本の引水線路はそれぞれの合理的な供水範囲があり、相互代替ができない。各地域の経済発展の必要と、前期の作業状況、政府の財力に応じて実施するだろう。