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西アジアが苦境から脱するためのガイドライン
ヨルダン・ハシェミット王国 ハッサン・ビン・タラール皇子
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中東は世界に対して強大な力を行使している。この地域が政策立案者の頭から離れることはない。軍事産業やエネルギー産業を駆り立て、グローバルな紛争のもととなるイデオロギーと、またそれに対抗するイデオロギーを供給し続けている。しかしながら、中東が他の地域と比べて何より際立っているのは、自らの地域の人々のために声をあげる能力にも意欲にも欠けているということである。中東という概念は、短所ばかりが伴うもので、世界的なインパクトにおいて長所とは無縁である。
おそらく、我々には、アジアから学ぶべき教訓があるはずだ。2007年2月、イスラマバードで、中東・アジア・欧州から参加者を集めたラウンドテーブル会議が開かれ、広範なアジア地域における類似のイニシアティブを生かして、西アジア・北アフリカ地域(West Asia-North Africa: WANA)における「社会憲章」を策定することが提案された。そのような憲章は、この地域の抱える数々の問題の根底にある、「民主主義の欠如」に取り組む一助となり得るのではないか。
政治的経験や経済システムの大きな違いにもかかわらず、アジアにはWANAの社会的・政治的不均衡を解決するために役に立つモデルが存在する。アジアとWANAは共に植民地経験を経、共通の宗教的・文化的歴史にもとづいた社会的価値観を持っており、両地域を合わせると世界最大の未開発市場をも形成している。加えて、貧困、脆弱なガバナンス、紛争や環境問題による安全保障上の脅威など、共通の問題を数多く抱えている。
貿易のための共同市場の開発とよりよいガバナンスをつくるための市民社会の協力推進という、アジアで現在進行中の2つのイニシアティブは、中東地域の将来の発展に向けた青写真を提供してくれる。東南アジア諸国連合(ASEAN)が典型例であるが、アジア圏内の通商貿易を促進する自由貿易協定や、Asian Dialogue Society (ADS)、ASEAN People’s Assembly (APA)といった市民社会のイニシアティブは注目に値する。
ASEANは、東南アジアの経済統合にはまだ成果をあげていないかもしれないが、地域の政治的安定化には成功している。今年後半に制定される見込みのASEAN憲章により、東南アジアの各国政府には遵守すべき一連のルールが示されることになる。そのようなASEANの努力は、WANAにとって、例えば欧州連合(EU)よりも、 地域協力を推進するよりよいモデルを提供してくれる。
WANAの社会憲章が国際的に評価されるものになるためには、弱肉強食の様相をますます強める市場を管理する国家の役割をきちんと再定義する必要があろう。司法は、無分別で受動的な検察官ではなく、権利の番人にならなければならない。また、人権、雇用、住宅、教育、貧困軽減など、先進地域の市民が当然のごとく享受している権利が、全市民が国家と結ぶ新しい社会契約の基礎とならなければならない。
中東地域で起きている数々の出来事は、トップダウン式の改革だけでは、地域社会に平和はもたらされ得ないことを示している。この地域では、政治的リーダーシップがあらゆる面で大胆さに欠け、現状に固執する傾向にある。中東で市民に世論調査をすれば、この地の紛争のあらゆる面において、いかなる犠牲を払っても平和のために尽くし、生活水準を改善する必要性に諸手を挙げての賛同が得られることは明白である。穏健派はまだ多数派であるのに彼らの声は届かない。我々は、市民社会が、平和を構築する思考に影響を与え、そのための必要不可欠な力を形成するというきわめて重要な役割を担っていることを過小評価してはならない。
だからこそ、この地域には、将来、草の根の市民参加が保障されるような制度が構築されなければならない。真の人間の安全保障―恐怖や欠乏からの自由という万人にとっての権利―は、人々が完全なる市民権により保護を享受することによってはじめて得られるのである。
今日我々が抱える問題の性質、すなわち、変貌するこの世界の性質が意味するのは、代表制の公正さを確保するために、国家は国家以外のアクターと協調して働いていくべきということである。力なき地域社会のために声をあげる人々を無視することは、地域の不安定性・非統一性を定着させる要因となる。それゆえ、対話と紛争解決のための信頼性ある枠組みを構築することが、社会的結束や安全保障をもたらすメカニズムに対して信頼を醸成するのに不可欠である。
中東の諸政府やNGOは、アジアのパートナーの助けを得ながら、市民活動を通して穏健的思想を普及させていくことができる。イスラマバードで議論された構想を成功させるためには、政府と市民社会双方からの参加が鍵となる。これは、この地域で、統治者と被統治者の間の亀裂が悪化してきていることをみても明らかである。
また、非常に近い将来、アジア諸国が世界をリードするパワーになることを留意すべきであろう。その歴史と近代の発展は欧米と密接に関係してきたが、今後は多様化の時代である。中国やインドのような大国は被援助国から援助国になりつつあるが、こうした国の援助は、西側諸国の援助にあるようなイデオロギー的束縛が少ない。少なくとも、中東や北アフリカ地域の政治経済構造は、南アジアや東南アジアにおける物やサービスの需要の高まりを反映させたものでなければならない。
中東の特異性は、域外勢力の影響に対する脆弱さであろう。イスラマバードの会議では、今日、そして明日のアジアに集中する力が、中東の人々のために投資されることが賢明であるという見解が示された。中東の新しい時代が、旧来から抱える問題を引き継がないためにも。
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