SPFの事業紹介

一般事業
アジアの平和構築と日本の役割
事業形態 自主/委託
事業実施者名
自主:
笹川平和財団
事業方針・ガイドライン 1. 平和と安全への努力
1.1 安全保障・平和構築
実施年度 2011年度
実施年度事業費 25,000,000円
実施年数 3年継続事業の2年目(2/3)
アルバロ・セデニョ・モリナリ駐日コスタリカ大使ご講演会<2012年2月9日(木)>
「非武装化の中長期的な費用対効果とは―コスタリカの経験から」ご報告
SPFは、2012年2月9日(木)に駐日コスタリカ大使、アルバロ・アントニオ・セデニョ・モリナリ大使をスピーカーに、ジャーナリストの伊藤千尋氏を司会者にお迎えし、講演会を開催しました。当日は80名ほどの方々が集まり、コスタリカの経験について活発な議論が交わされました。
伊藤千尋氏

伊藤千尋氏

当財団茶野順子常務理事の挨拶のあと、まずは朝日新聞サンパウロ支局長、ロサンゼルス支局長を歴任され、コスタリカには10回以上訪問し、今年1月にも同国のエコツアーの取材をされてきたというジャーナリスト、伊藤千尋氏から、豊富な取材のご経験をもとにコスタリカという国についてお話しいただきました。

1980年代にサンパウロ支局長として赴任し、朝日新聞の中南米報道を担当されていた伊藤氏は、1984年に初めてコスタリカを訪問され、隣国のグアテマラ、ニカラグア、エルサルバトルといった国々がいずれも内戦に苦しみ、子供が銃を持って戦争に行くところ、コスタリカだけが平和を維持し、子供は戦争ではなく学校へ行くという状況に大変驚かれたと述べられました。

さらに、コスタリカは日本同様平和憲法を持っているが、日本と違い持っているだけではなく平和を輸出する努力をしてきたと。一例として、中米紛争解決のため、当時のアリアス大統領が隣国三国を回って対話を説き、この功績が評価されてノーベル平和賞を受賞された歴史や、軍隊を持たず他国に攻められたらどうするのかと市民に尋ねたところ、コスタリカは世界平和のために努力してきたのだからこの国を攻める国はないだろう、自分たちはコスタリカ人であることに誇りを持っている、と回答を得たというエピソードなど紹介されました。

続いて、コスタリカは、常備軍を廃止したことにより浮いた予算を教育、医療、福祉に回し、世界に冠たる教育国家、医療国家となった事実、「兵士の数だけ教師を作ろう」というスローガンなどコスタリカの政策の素晴らしさについて説得力を持って説明され、2002年に伊藤氏がエコツアーでコスタリカを訪問した際、山小屋で迎えてくれた人物が実はカラソ元大統領で、大統領任期終了後は、民間人として国の発展に貢献するため退職金を投じて山小屋を建てたという元大統領に感銘を受けたなど興味深い体験談も語って下さいました。

伊藤氏は、今年初めセデニョ・モリナリ大使ご夫妻とお食事をされたそうですが、講演会当日もご出席されていた日系ブラジル人の大使夫人との出会いが、お二人がNGO活動に従事されていたインドであったという逸話や、また大使が36歳であり、着任して間もなく起こった震災後、石巻に向かって被災者の支援をしていた事実などご紹介され、若くボランティア精神に溢れた人物を大使に任命するコスタリカ政府に改めて感嘆しつつ、セデニョ・モリナリ大使をご紹介いただき、大使ご講演へと移りました。
アルバロ・セデニョ・モリナリ大使

アルバロ・セデニョ・モリナリ大使

セデニョ・モリナリ大使は、ヨハン・ガルトゥングの定義などを引用しながら平和の哲学について語られた後、コスタリカの歴史に触れられました。選挙結果の是非をめぐり内戦に突入した1948年、「国民解放戦争」を率い政府軍を破ったホセ・フィゲーレスは、常備軍の廃止を構想し、翌年制定された憲法においてこれを制度化します。常備軍の廃止については、政府軍が弱かったという事情もあり、実際のところ大きな政治的反発はなかったとのこと。フィゲーレスは、H.G.ウェルズの『世界史概観』の「人類の将来には軍は存在すべきではない。警察はあっても良い、人々は不完全だから」という一説に啓発されたそうです。

その後、コスタリカにおける常備軍廃止の具体的な利益について大使が述べられたのは、(1)軍の政治介入がないため内政が安定、(2)国際社会、特に隣国のニカラグアとパナマに対し、コスタリカからの軍事侵略はないという保障を明確に与えた、(3)軍事費を教育と福祉の予算に回すことができた、などです。

大使はその後、中南米地域の現状にも触れられました。70年代後半より中米紛争が勃発、この和平調停の功績により当時のアリアス大統領は87年にノーベル平和賞を受賞されています。しかし現在も、カリブ海流域や中米は暴力の犠牲が多い地域であり、麻薬取り締まりによる死者数は、たとえばメキシコでは過去5年間で50,000人に上るとの数字も紹介されました。

世界の軍事費は1.6兆ドル、これは国連が2000年に出した「ミレニアム開発計画」と、スターン報告による気候変動への対策費を合わせた数字の15倍にあたるという事実、また世界では、人口全体の2倍にあたる140億もの銃弾が生産されている現実を指摘され、一体これだけのコストをかけた軍事費が必要なのかどうかと大使は問いかけられました。

ご講演の最後に大使は、2006年にコスタリカが発表した「コスタリカ・コンセンサス」(軍事費削減の努力を行う国家により多くの援助を与える)、またコスタリカ政府とアリアス大統領、及びノーベル平和賞受賞者の働きかけにより国連総会で議論が続けられている、武器の輸出入への規制を呼び掛ける「Towards an Arms Trade Treaty」など、コスタリカ政府が世界の平和へ向けて行う外交的努力に触れながらも、米国や安保理常任理事国が武器取引に深く関与する中、こうした外交的努力が実を結ばない現実の難しさについても述べられ、日本やコスタリカのような平和国家が、軍事力に頼らず国際的な信頼醸成を蓄積していくため努力を、手を携えて行っていくべきだと訴えられました。

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