税金の使途指定を考えるために〜


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パーセント法の起源(ハンガリーのケース)
1990年初頭のハンガリーでは、ほかの旧共産主義国と同様に、民主主義国家への移行過程で政府機関ではない組織の財政をいかに維持していくかが大きな問題となりました。
市場主義経済への移行に伴い、ビジネスセクターは経済的にも独り立ちしつつありましたが、教会や公的サービスを行う団体の経済的自立は難しい状態にありました。
特に市民が自発的に新しいNGOを立ち上げる動きが相次いだ中で、これらの組織のための資金ソースを開拓する必要がありました。
ハンガリーの経済学者であり、元国会議員のトーマス・バウアー (Tamas Bauer)や、European Center for Nonprofit Law のディレクターであるニルダ・ブレイン (Nila Bullain)が2004年1月に開催されたパーセンテージ・フィランソロピー会議のために執筆したペーパーの中で、パーセント法の起源について触れている部分からパーセント法成立にいたる過程をたどると以下のとおりです。
●教会の資金獲得をめざして
ブレインは、19世紀にヨーロッパ各地に広まった政教分離後の教会の収入源を確保する試みに、パーセント法の起源を求めています。
たとえば19世紀ドイツでは、国家に登録してある4つの大きな教会のメンバーから所得税の8〜9%相当額を所得税に上乗せして徴収のうえそれらの教会に配賦しており、オーストリアでも同様の措置がとられ、教会への配賦額は総所得の1.25%に相当するものでした。一方スペインやイタリアでは納税者の教会に対するボランタリーな寄付を認める法律があり、このボランタリーな「パーセントメカニズム」が受益者や金額の規模は異なるものの、ハンガリーやほかの中・東欧諸国で現在行われているパーセント法のモデルとなったと述べています。
●NGO資金援助に関わる政治の影響
また、バウアーは、ハンガリーの1%法の主な狙いは、NGOへの資金援助に関する政治の関与を少なくすることであったと主張します。すでにハンガリー国議会の特別委員会では数百のNGOに助成を行っていましたが、これらのNGOは国内にいくつかの活動拠点を有する大手の団体に限られ、またその時の与党に近い団体、あるいは国会議員の強い推薦を受けることができる団体が恩恵に属することが多かったことから、こういった政治に左右されない資金配分の仕組みが必要であるとの考えが広まるようになりました。
パーセント法成立の過程
ハンガリーの教会は政教分離により資金的に独立することが求められていたにもかかわらず、国家からの資金援助を求める傾向にありました。
これを背景に、1994年選挙の際、社会党、自由党ともにマニフェストの一部として、イタリアやスペインの例に倣い、納税者の意思表示があった場合に税金の一部分を教会の収入とする法律を導入すること、また同様の措置をNGOにも適用することを発表しました。
両党はその後、連立内閣を樹立しましたが、公約はなかなか実現されず、むしろ1995年3月には大幅な予算削減を実行せねばなりませんでした。大幅な予算削減の憂き目を見た文化機関の資金源の一部として、教育文化大臣は国民からの自主的な税金の使途指定策を活用することを主張し、ここにパーセント法の考えが再度浮上しました。
すでに1987年の所得税法において、寄付金に対する税制優遇措置はとられていたわけですが、ハンガリー国民の多くは寄付を行なうことにはそれほど熱心ではなく、納税者に負担の無い形で資金を振り分ける仕組みとしてパーセント法が脚光を浴びることとなったといえます。
1995年秋の新所得税法では、パーセント法の部分は最終的には法案から削除されましたが、1996年に特定部分の個人所得税の使途に関する法律(以後パーセント法)が成立し、政治に左右されずに税金の一部使途指定によりNGOが資金を獲得する道が開けることとなりました。
●パーセント法成立に至るまでの主な論点
- 国立の文化機関の扱い
劇場、博物館、図書館、コンサートホールなど、国からの補助金を得ながらも入場収入などにより収益を得ている国立の文化機関については、従来はNGO、教会の資金源のとしてのパーセント法を検討する際にはいわば蚊屋の外の存在でしたが、教育文化大臣をはじめとした政治家の一部の積極的な支持を受け、パーセント法下の受益機関の一部となりました。ただし、これらの機関には納税者の使途指定がほとんどなく、実質的にはあまり影響を及ぼすに至りませんでした。
- ローカル対全国規模
もともとの政府原案では、税金使途指定の恩恵に浴するのは全国的に活躍する団体のみで、特定の地方でしか活動していない団体は除外されることになっていました。
つまり、ハンガリーには何千もの非営利組織が登録されているなかで、重要な社会目的に資する活動を行っている200〜300の機関のみを受益機関と限定することによって、パーセント法による財源の確保を可能とすることが考えられていました。
それに対し多くの政治家は、地域住民が自分たちに直接的に関係のある組織を支援することが重要だと考え、市民がそれぞれの地域の事情に基づいて、自由に非営利組織を設立・発展させるようにパーセント法を活用しようとしました。
結局、現行のパーセント法では使途指定の対象となる機関は何千万までに拡大され、統計的には非営利組織の収入合計額のうちパーセント法によって得られた額は全体の0.7%程度である、という結果が出ています。
●教会の取り扱い
初めてパーセント法による使途指定が実施された1994年には、ハンガリーの2大教会はNPOと1%の指定を争うことを嫌い、1%法による資金の受け取りを拒否しました。政府と教会との間で話し合いが持たれた結果、政府側は教会のみを対象とする、第2の1%を設け、NGOとの競合関係を解消することを約束しました。
●パーセント法設置の結果
パーセント法の受益機関が拡大されたため、パーセント法が全国的に活動する非営利組織の資金を、当初期待されていたほど多くの割合でまかなうまでには至りませんでした。
また、議会から助成金を得ているNGOが1%法により納税者からの指定を受けることがほとんどなく、事実上議会はこれらの組織への資金援助をやめることはありませんでした。
むしろ市民は、地域に根ざし、自分たちの利益に直接関係する団体への支援を好むことが統計結果から証明されています。
また、受益機関の1/3は教育関係の機関であり、次いで福祉関係、医療関係が多いという数字が出ています。
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