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T.V. Paul教授を迎え専門家会合を開催いたしました
「アジアオピニオンリーダー交流」

2015.02.27

カナダ・マギル大学政治学科のT.V. ポール教授(専門分野:国際関係、国際安全保障、南アジア)の来日に際し、「アジアオピニオンリーダー交流」事業の一環として、「アジア太平洋における勢力均衡政治への回帰は現実のものとなるか」と題する非公開の専門家会合を2015年1月16日に都内にて開催致しました。

はじめにポール教授は、大国の台頭と覇権の移行に関する歴史的背景やアジア太平洋地域における中国の台頭等について解説をしたうえで、当該地域の安定化に関し、以下の見解を述べました。

現在、中国、ロシア、インド、ブラジルといった急速に経済発展を遂げる国々の台頭により、世界における既存の勢力均衡は崩れつつある。歴史上、大規模な戦争は国家間の権力移行時に発生することが多かったが、このような歴史上の過ちを繰り返さないために、新興国の勢力台頭とそのパワー・バランスの移行過程を、軍事的手段に訴えることなく、平和裏に進めていくことが、アジア太平洋地域における外交・安全保障上の重要な課題である。

特に近年の中国の急激な台頭は、グローバルな安全保障秩序に対し多くの課題を突き付けている。中国の勢力拡大に対抗するために国や地域が取り得る平和的な手段としては、国際機関等の制度を利用する「ソフト・バランシング」(※)と多国間の経済的な相互依存性を利用する「経済的バランシング」(※)があるが、現在、アジア地域では、経済的統合は緊密であるものの、安全保障分野において制度を通じたソフト・バランシングの役割を担える地域機構は皆無に等しい。欧州の欧州安全保障協力機構(OSCE)などを模して、類似の機関を設立するのも一案である。

ポール教授の発表後、立教大学法学部政治学科の竹中千春教授の司会の元、中国の民主化と国際社会への順応(accommodation)との関連性、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を含む、中国の経済的統合に関する展望、さらに日印協力関係の方向性等について、地域研究者や安全保障の専門家らを交えての活発な議論が行われました。

※「ソフト・バランシング」と「経済的バランシング」
前者は、脅威となる国家、特に大国に対して、国際機関等の組織や制度を利用し、これらの国々の政策の正当性の欠如を内外に知らしめることにより攻撃的な行動を抑制するバランシングの方法である。後者は、経済的な権力を特定の国々に集中することを避け、むしろ多国間の経済的相互依存を深化させることにより、経済的な覇権国を作らない方法である。

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